蜜柑狩 '13ナミ誕
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    ○枕 (モモノスケ、ロビン、ゾロ)

    2013ナミ誕 ] 2013/06/28(金)

    「船内?朝ご飯まで一人で海に落ちるようなことをしなかったら別に何処を見てきてもいいわ。船底の方にフランキーがいるから連れだして説明して貰ったら?」
    「せっしゃも かような船は初めてじゃ」
    母上を彷彿させる柔らかき微笑み。
    昨夜の痛みも癒える。




    先程までなにやら夜半に気になる事があったらしく寝不足顔であった父上は朝になってからお休み中で、せっしゃは新しい朝日の中、ロビン様と花壇の世話を助力させて頂いた。
    久々に触れる船の芝の緑は柔らかく、マストが朝日を遮る影で水を受けた植物の香りが懐かしき我が家の記憶と重なり心地良い。

    昨夜いれて貰った大きな風呂も気持ちよかったが、その後の見た事のない水槽や船底のドックも珍しく作業途中のロボ殿に案内して貰い尚のこと驚きは隠せなかった。


    まず行った船底でロボ殿は困ってお出でであった。
    「おりゃ?」
    ドックの音がいつもと違うと言うロボ殿が取り出した金属の道具で壁を叩き出す。
    「おめー後は勝手にしとけ。ここは朝飯前にちょっと調整が要るみてーだからよ」
    手伝うと申し出てみたが逆に笑顔でぽんと背中を押された。
    いつもは腹立たしい子供扱いが、今の自分には嬉しくもありくすぐったくもある。

    そして
    残る冒険は一番高い位置にある楕円形の部屋。
    一人で探検じゃ。





    マストを登り上向きの戸に手を添えると床が鳴った。
    シュッと軽い音と同時にさっき船底で聞いたようなギッと重い音が一緒に聞こえてくる。
    さっきの音は分からなかったがこの音なら分かる。
    道場の床が軋む音だ。
    ああ踏み込んだ摺り足とそれを受ける床の音。


    そっと戸を押し上げて開けると男が一人。
    緑頭。
    資格無き刀を持つ者。
    父上から盗賊だと言われている男。
    リューマの伝説は誰でも知ってる物語。その刀を盗むとは不敵至極、ただの海賊の悪人だ。


    なのに息が出来なくなった。
    胸が異音を為して止まらない
    もっと見ていたい
    もっともっともっと


    なんとも綺麗な形の素振り。
    踊るように型が流れて行く。
    もの凄く流麗なのに剛の剣。
    素振りを見れば判る。嗚呼
    嗚呼   凄い人だ。


    上段の構えのままチラリとこちらを見た。
    「ん?嗚呼、てめェか?」
    気付かれた
    逃げたくなった。

    出来なかった。
    直ぐに鋭い振りが目にも耳にも飛び込んでくる。

    「そろそろ飯か?」
    「いや、拙者は」

    男は振りを止めてこちらを見た。すたすた歩いて拙者の脇から手をいれて部屋の中に持ち上げる。問うような鋭い視線が・・・いきなり堪えたように吹き出した。

    「無事で良かったな」
    「ああ?しまではせわになりもうした」
    「そっちじゃねぇ昨日の晩の話だ。腹に一発、顎に一発。枕はともかくお前は流石に投げられやしなかったみてェだな」

    脳天を突き破られた感じがした。
    昨夜の衝撃が思い出される。


    実は・・いきなりお腹に衝撃を感じたのは脚だった。衝撃で目が醒めて起き上がってみた。その顔に何かが飛んできた。そこから又一時記憶がない。暫し経て目を開けるとおナミ殿の腕にガシッと絡まれて動けなくなっていた。

    朝には顎と腹がちょっとおかしくてもおナミ殿の仕業と判って驚いたが諦めた。それを口にせぬが男の道である。



    だがなぜこの男がそれをしっておる?
    「おぬし!にょしょうのへやをのぞきみておったのか?ゆるさぬぞこのかいぞくが!!」


    言葉の終わらぬうちにいきなり頭がクラクラした。

    目にも止まらぬ速さで武士殿の一発が頭に入っていた。
    正確には拳と思う衝撃を指一本で弾かれていただけだったが。

    「アホか、コックや骨じゃあるめェし。いいじゃねぇか、投げられたのがテメェじゃなくて。蹴られて枕ぶつけられただけだろ」
    脇から手が抜かれた。
    「では・・なにゆえそれをごぞんじか?」
    問う。

    武士殿は首を軽く傾けた。やおら立ち上がり構えの形に直った。
    横顔はふんと鼻息がもれてなんだか優しい顔である。
    「あの寝相はなおらねェ」
    振り下ろした剣から荒々しさが消えていた。
    優しい、目の前の花を生ける姿のような優しさにかわっている。


    「ゾロー」

    窓から声がした。
    ロビン殿だ。


    「そろそろ起こしてきて。」
    「何でまたおれなんだ?」
    「私は嫌よ。寝ぼけたあの子怖いんですもの」

    ったく、人を使うな。

    最後の言葉は独り言めいて、そのまま錘を置くと窓から飛び出した。
    あわてて拙者も梯子を降りるとロビン殿が手を振り待っていてくれる。
    女部屋の扉をくぐる背中が見えて扉が閉まるのが見えた。

    「さ、ご飯にしましょ。」
    「よろしいのでござるか?」
    扉から目が離せない。
    「良いのよ。彼にしか出来ない数少ない仕事だから。けど私たちの閒の内緒にしておいてね。」



    笑いながらロビン殿に手をひかれて食事部屋に入ったら、父上と骨殿と料理長殿ににらまれた。が、もしかしてにらまれるべきはここにいないだれかであるような気がした。


    end


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    △観月(moon-gazing)イラストより

    2012ナミ誕 ] 2012/09/01(土)
    その空間の音はぽわんぽわんと聞こえてる。
    でも音じゃない。触感が耳に聞こえるような、これはただの感覚。触感。
    耳をくすぐるような微かな優しい聞こえない響き。
    目には大きな、あり得ないはずの大きさな、まるで月。
    人間へのもてなしの心を伝えようとした彼の女王の残した空間。海の国の宝の一つ。
    興奮して言葉選びを苦慮するしらほしから話を聞いた。
    初めてもてなす相手が人間の海賊達と聞いても彼女は微笑んでくれるような気がした。






    「もーかなわんわ、わし、宴の準備で忙しいっちゅうのに・・・ええいそちらではないわ!ここを開けるのも姫様たっての願いだからじゃぞ!」
    「やったぁ!いい匂いだと思った!!」
    ウロチョロするルフィの首根っこを押さえたのはサンジ特製ではなく厨房の人魚が運んできた山盛り軽食を無理矢理乗せた大型ワゴン5台。彼らをもてなす宴の準備に少し時間が欲しいという王宮の要望とルフィの腹の虫の盛大さに対しての配慮らしい。アドバイスを受けて今度こそはの魚人達の配慮は的中、甘海ぶどうはじめ魚人島の珍事がてんこ盛りでサンジも試食に余念がない横に匂いに釣られたルフィは手を出しながらきちんと付いてきた。



    「うへぇ真っ暗」
    背の高い扉がギシリという音を立ててゆっくり動く。外に引かれた扉は周囲の空気を動かし、その動きに合わせて扉の裾で埃が舞う。扉の固さから開かずの間だった事を伺わせる。
    「管理用の扉ならそちらじゃが正門を開けるようにとのお言葉じゃ・・貴様らは海賊でも仮にも客で、ここに値する人間じゃからな」
    大臣はなぜか空自慢げに宙をそよぐ髭で大きな扉の隣の小さな入り口を指さし胸を張り、そして人には見えないフランキーとチョッパーに視線を送って一度溜息をついた。
    「・・ワシらも人間という意味をもっと広く考えんといかんのう」
    他人には聞こえない呟きを耳にしたロビンはなにやらツボにはまったよう。クスクスと笑いが止まらない。


    案内されたのは先の天竜人が助けたという貴人・・つまりは人間をもてなすための部屋。
    名を『観月の間』という。


    「海底での月見の部屋って事?」
    「なぁじーさん。無理じゃねェか?海底じゃ太陽と一緒で月がね-だろ?」
    ロビンが問う視線を送り、後方に控えたウソップが両手を後頭部に組んで呟く。
    「それをここの管理人の海狸親子の前で口にしてはいかん」
    海狸は海獣ではない。魚人には珍しく親子の形が似通う地上の生き物に近い。彼は息子たちと共にここの管理をしている。性格は生真面目。一本気故にふざけたりが通用しにくい。

    暗い部屋だった。広さも高さも読めない。なのに小さな影が飛び出してきた。
    「客人方、入りなされ。そして黙って見てくだされ。確かにこの光、陸で見る本物ではありません。しかし先人の絶えぬ苦労の賜物ですぞ」
    体温を感じるふわっとした生き物が囁くように言っては部屋から次々と出てきた彼らが右大臣の指示で灯りを入れると暗闇だったはずの空間の底の方に仄かに優しい灯りが零れ始めた。海狸だそうだ。
    その合間に入っていった兵影だけが淡い光の中幽霊のように揺れている。騒ごうとしたブルック達を大きな海狸はポカリと殴った。結構血の気の多い御仁らしい。
    そして着いてきた兵士達に指示をする。


    「あ」
    小さな光る球体が数個様々な高さに浮かんだ。

    ほんの淡い光。
    一吹きで消えてしまいそうなその淡さには軽やかに駆け寄ろうとしたルフィでさえも呼吸を堪えた。
    しぃっ声を出すなと指示されながら促されて全員が部屋に足をゆっくり踏み入れる。
    柔らかいシャボンの木の根を越えながら思いの場所に広がり上を見た。少し明るい気がしたからだ。

    丸い球が上方で淡く光を放ち始めた。木の根に張り付くそれは見られたためしがない。
    最初は微く、光はゆっくりゆっくり光量を増してゆく。あくまでも柔らかな光だ。
    光に照らされ周囲が顕らかになって行く。
    陸に上がった魚人達の話から想像して職人達が作ってみたというひときわ大きな、地上で見るよりも大きな、ああまるで月。


    壁は海と同じ碧。その壁が部屋の下から上に向かってどこまでも延々と続いていくように見える。室内にこの空間を作るには壁の色遣いの配置にはもの凄い計算がなされているはずだ。張り付いたようにシダ類やコケ類やそして上にまで伸びゆく木々に巻き付き勢力を示す。
    全てを空気で満たした部屋で敷き詰められたシャボンの根は同じく大小の丸い泡を放ち続けている。月に似た光がもたらす柔らかい青の部屋の中でシャボンは反射して虹色に揺れ、一つ、また一つと浮かぶ。浮かんでは上方に向かい何処まで行くのか目が離せない。


    小海狸が白い団子を持ってきて配り始めた。
    ふわっとした触感の見事なこれも球状の餅。
    笑う可愛らしい獣の小さな手から柔らかく真っ白なそれを手に受け取る不思議な姿を見つつも、天井の光景から目が離せない。

    言葉が出ない。
    目が離せない。
    同じ物を見ながら仲間内で目を見交わす事もなかった。ただ空にも見える上の空間に浮かんでゆく泡達の行く末を追いかけてしまう。
    立位の者もいる。座り込んで見上げる者もいる。皆、それぞれに互いの目に映る光景に飲み込まれて同じく言葉を失い同じく見上げ続けていた。






    綺麗な光景に心を奪われて無言になる事時には呼吸も忘れるのだとナミは始めて知った。

    溜め込んでいた息をゆっくり吐き出す。
    自然にもう一度ゆっくりと吸い込む。
    繰り返してみながらも、この光景から目が離せない。
    この空間に早すぎる動きは似合わない。次は軽く吸い込みそして優しく吐く。次に吸い込んだら体は和らぎ、ようやく言葉が溢れた。

    「・・・きれい・・・」
    「・・・きれいだな」
    言葉が重なった。 期せずして。無意識に自分から零れた言葉と同時に重なる言葉が耳から入ってきた。
    その言葉が一期にとゆっくりを同時に、ナミの中を満たしていた。全て無意識に。


    隣にいた男の少しかすれた声で静かに、確かにそれは耳に聞こえた。
    この静かな部屋でずっと感じていた光の音とは余りに異質だったせいか、耳の奥底にまで響いたその言葉はナミを底から震わせた。

    低い声だった。聞かせるためじゃなくただ零れた音が身体の奥にじんと響く。
    響いてナミの身体の中を揺らす。
    揺らされて、そして中から震えが来る。
    ほんの一言が一音が、鼓膜を叩いて頭頂から響いて、そしてお腹の下に響いてまた揺れて震える。
    振動が快感の蓋をそっと開けてこの空間の碧い光を身体の中に外に絡ませる。

    身体の中に起こる波動に呼応しつつ、ゆっくりとナミはその隣を見た。
    彼が居た。


    月を観てる。
    腕を組み、指先だけが他とは異なるやや弛めのリズムを刻む。違うリズムでゆっくり頭が波打って見上げてる。
    光景に酔えるような繊細な感性を持つとは思わなかった男が空中を見上げて嘆息してる。

    ただ。
    この碧い空間の中、奴が別人のように見える。
    碧いリズムの具現者の美は戦闘中の、存在感ある、信頼に因る美ともまた違う。
    穏やかでいてそして清冽な、そう綺麗さ。

    ああ息を詰めてただ見つめてしまう。

    心が彼に揺すられた今は見つめてしまった視線を動かせない。
    これはこの部屋の魔法なの?それとも月の魔法?
    ああ、先程の光の乱舞と同じ視界の持つ力に酔ってるのかもしれない。
    意をして創られた物にはなにがしの念が隠っているのだろうか。

    観てしまう。

    アイツが嬉しそうだ。ああ楽しそうだ。口の形が笑みを浮かべてる。もらった白玉団子を加える口元が愛おしい。
    その笑みが嬉しい。
    愛しさの意味が分かる。
    自分の中に広がる。

    ゾロが可愛い。
    ゾロの。
    ゾロの喜びが純粋に自分の中で嬉しい。

    何でこんなに嬉しいんだろう。



    視線を感じたのかゾロがゆっくりと首を回した。仲間に見せる優しい視線をナミに合わせてきてる。
    「どうした?」
    その声も碧い光の中に浮かんでいる、柔らかな問いも別世界のよう。
    いいえ、もしかしたら私がゾロに勝手に緩んでしまったから感じる魔法でそれらが柔らかいのかも知れない。

    「なんでもないわよ。だって・・・・・・・綺麗じゃない」

    むりやり空を見上げようとした私の肌がチクチク感じてる。だってアイツがじっと私を見つめてた。
    まだ・・まだ見つめてる。だからそっと首を傾けてみた。

    なんだか顔が熱い気はするけど私だってアイツを見返していられる、そんな私だから大丈夫。
    勝手な思いの筈なのにゾロの視線が肌の至る処に感じられる、けど私は見返してる。
    だってこんなゾロを見逃すなんて、何より惜しいんだもの。
    「・・・・・・ああ綺麗だな」
    絞り出されたゾロの口にはそれ以上の言葉が乗らないからその声だけが言葉に乗って私の中で反響して響いて響いて。
    ああ視線だけでももの凄く困るのに。

    「・・・・・・・うん凄く綺麗よね」
    真っ赤な顔を隠したつもりで無理矢理返せた言葉がこれなんて情けないって言うか恥ずかしいって言うか、何より自分の有り得ないセンスの無さに呆れちゃう。


    「そっちじゃねェし」
    呆れを含んだ声と碧の部屋の中でゾロの視線がきゅっと私に突き刺さったような気がした、その後ずいっと目を逸らしたゾロの碧く見えた顔色が少し紅に高ぶった感じがする奴の。目は遠くを泳ぐばかりで気のせいだろうけど。


    ふと気が付いた。
    ブルックの静かなヴァイオリンの音が部屋に流れていた。
    満ちすぎた私たちの間を、流してくれるかのように。





    end  


    △天花雪ぐ(サンジ語りの669話)

    2012ナミ誕 ] 2012/07/01(日)
    心地よい酔いを含んだ睡魔に身を任せている空を飛ぶような感覚の中。
    その風を感じなくなって、夢の中で聞こえた二音。
    途端 自分の体の中で弾けた大きすぎる感情が二心。

    俺の中のはずなのに、その一つは、明らかに自分の物じゃなかった。





    「ゾロ あんたも行きなさい。それからサンジ君達が私の体に触ったら10万ベリー、覗いたら20万ベリーってのはあんたにも借金に付けるわよ!」
    「んだと!こんの守銭奴!!てめェ二年前から一っつも替わってねェじゃねェか!」

    愛しのナミさんの指示だから断れねェがこんな馬鹿が楽園と一緒の俺に付いてくると思うと本当に鬱陶しい。
    それでも間違った方向へは行っていなかったと思う。
    だってこの雪山で骨の爺と迷子と一緒の割には浪漫に出会えた。
    ちょっと浪漫に意識を持ってかれ過ぎたのは計算外だったが。


    構 えた銃と臭いに覚えがあった。おそらくは同じガスなんだろう、二度目だったんで一瞬の差では身構えた事と・・・多分中で弾けた気持ちの衝撃で一人早めに目 を覚ます事が出来た。
    三下が何かほざいていたが関係ねェ。
    そういえばナミさんも身軽で体は柔らかいだけに強さはなくとも動きに違和感は少ない事に気が付い た。
    だが何せ 体はか弱いナミさんのもの・・・アザでもできたら大変だ。



    アザ?

    手足を感じてみる。

    落下の傷どころかアザ一つも無ェ。

    上を見上げた。
    先程落ちた先の崖は降雪で見えないくらいに高い。
    ナミさんのこのお体に傷一つなかった事は喜ばしい限りだ。まだ起きないブルックの奴が軽量ながらもかなり雪の中に埋もれていたうえに首がややあらぬ方向を向 いている事と比べると、こちらは落ちた衝撃の記憶もなければ痣一つないし、寝たままのマリモがこれまた偉く盛大に雪に顔を突っ込んで埋もれている事もざ まぁみろと思える。

    だが崖下に視点が止まった。ブルックの転がった先とマリモの転がった先に二つ、落下の跡が見える。自分が立ち上がった後もその一つ・・・・・・マリモ側から分かれて転がった跡に見えた。
    そしてやや遠くに切り口のある剣山状の雪塊が小山のようだ。



    夢の中のように思えたさっきの記憶を思い出す。
    『・・・ナミ・・』
    耳元で響いた時に感じた絶対的な拒否感と自分の物じゃない溢れ出す歓喜が体内で蘇る。
    あの時も今でも自分の感情でない事ははっきり分かる。



    ああ、陽も差さないのに雪の強い照り返しが目の裏にまで染みこむ。
    染みこんで苦くとも納得した。

    「ちっ・・・あの野郎に庇われたか」


    喧しく文句は言う割にはナミさんを守る事に賭けては絶対に信頼を裏切らないこの男に俺が抱くのはやはり拒否感だ。さっき寝ながら感じてた俺の方の感情だ。
    ただ・・ナミさんの中に俺が居て、これが不思議な事なんだが感覚も記憶も全部俺なのに意識が遠のけばナミさんの喜びを俺も感じる事が出来た。
    きっかけはおそらくは抱えられて守られた腕、野郎の呼んだ声。
    そこから溢れた歓喜。

    ソレを分かっちまうと腹立ちも諦めも張り合う気持ちも出てきやしねェ。
    あたりまえに護り守られている二人に対するこの気持ちをどう表現すれば良いのだろう。





    「一本失礼・・・」
    吸い込んで煙の快感が手足を巡り心の芯に煙が行き渡る。
    吐き出した煙が一本空に向かって立ち上る。
    あっさり喫煙を許してくれた彼女の笑顔を思い浮かべる。
    「ナミさん・・・!」
    重たい何かは昇華されないままでも大気に雪がれて溶けてゆく。


    「さて・・・」

    ナミさんのお御足で蹴り降ろして起こしてやったのはせめてもの嫌がらせ。いつものナミさんと同じ拳骨殴りになど絶対にしてやるかよ。





    ◇遠き峰(ゾロ)

    2011ナミ誕 ] 2011/07/03(日)
    一歩一歩を踏む事にすら慮外の力と技を要し、道は登れど登れどなほ遠く。
    一つ頂を越えたと思ったら先の見えない頂がまた次また次と眼前にそびえ立つ。
    期限は2年。もとより覚悟の道なれど。






    「・・・・ここまでだな」
    「俺ならまだやれる!」
    一呼吸の間の後に、フンと鋭い鼻で軽くあしらわれた。
    「・・気の散じた『獣』につきあうつもりはない」
    ミホークの瞳は鷹よりも厳しい。同じ冷たさで放たれたその言葉を覆せる者などいない。いつものことだが訓練内容はもとより全てにおいて説明などされた覚えもないし実際、すでに遠く離れた背中にはとりつくしまもない。それでも彼の態度を自分は理不尽とは思っていない。

    解っている。全ての因果は己の中にある。




    「ふう」
    異を唱える事ができないまま、刀を杖に側の石の上に座り込んだ。思わぬため息が漏れ出る。

    修行に達成感と満足があったのは初期の頃。愚かなりに輝かしくも目を見張るような時期だった。
    一年を過ぎようかとする今頃では己の延び代は見すえられ、逆に日々ミホークとの差ばかりが解ってくる。
    眼前の姿がただの蜃気楼だったと握り締めてみた手からこぼれた事などもう数えきれない。
    己が一山を超えたと思った先にはまた次の峰が更に高く遠くにそびえ立つ。それでも前に進みまたその山を越えれば次が。そればかりが終わりなく続いて今自分がどこにいるのかもう見当もつかない。更には進んでいるのか曲がってしまい逆に衰えているのかも手に計れない。

    ルフィのために自分の為に、俺はもっともっと強くならなくてはならない。あの東の海での誓いを果たすために決してあきらめない。それは重々解っている。だが。





    ずるずる上体が地面に吸い寄せられるのでそのままごろりと寝ころんだ。
    ここは島の反対側。切り立った崖の上。

    頭上に曇天。ここに滞在して既に1年を超えた。
    幾多の島々からなるこの辺りの空は常に霧の中、良くても曇って雨になる。
    視界の端に海の見える岩山の上から近隣の島が見える。霧の向こうに揺れる小さな灯がいくつか見える。そちらには小さな町村がある。
    海風だ。
    磯の香りが微かに霧に混じっている。目を閉じて居ると違う景色がぼんやりと、霧がかかったように目に浮かぶ。
    俺たちの船の上、芝生が輝く日差しが懐かしい。耳に聞こえるはずのない葉ずれの音が甦る。磯の香りにのった柑橘の香り。
    朧に包まれたようにぼんやり心に灯る昔日の絵。

    こんな郷愁など自分に似合わないことは百も承知だ。
    だが今は岩上に倒れ込みながらただその柔らかな想いの中だけに身を置いていた。





    突然 視界の遠くで空が割れた。
    遠雷かと思った。


    直後空を割り、大きな日の光が一直線に降り注いでいる。
    空を打ち抜いて届いた空を割る陽の光。
    霧の向こうでその鮮やかな光の周囲に散乱した光が重なり増幅して大樹の幹のように天と地を繋ぐ。

    一過 大音声が響く。
    少し遅れて音が追いついた。
    雷よりは軽い、音とは言えないくらいの軽い、何かを割ったような音。


    その光を瞼の裏に焼き付かせてその後濃い霧の臭いをかき消すような清浄な空気が光の束から吹き込んだ。
    空から一気に降りた大気が重量を保って島に吹き付けそのまま周囲に強い風となって広がる。
    圧されるような強さを保つ、濃く、甘い大気だ。
    強い。
    だが軟らかく、そして奔放な風が俺の体を撫で上げて、まとわりつきながらも一瞬で去って行く。

    ああ。先程心に描いたよりもっと鮮やかに懐かしい船上を映し出すその甘くとも澄んだ大気。
    先の絵よりも鮮やかに魅了される。
    瞳を閉じて瞼の裏の映像と共に大気の愛撫を思う存分受ける。



    派手な光の応酬を散じた霧がまた島を包むのにほんの数分。風は去り、また霧の濃い臭いにこの身毎包まれた。
    深い呼吸で吸い込んでも重く濃い大気が戻ってきた。


    だが先程より身が軽くなっている。
    自分の呼吸が変わった。
    何かを得たような。





    「おい、いつまで寝てる?」
    影が瞼を侵略する。俺の残像を遮る。

    傘女だ。
    無視して目を開けずにいると珍しくも、まだ声を掛けてくる。
    「いつもみたいに寝ててアレを見損ねたか?ザマーミロ」
    更に珍しい。俺に話しかけてるのになにやら嬉しげだ。
    「見たぞ」
    どうでも良いと思いつつ相づちを打つのはこの女が何かを含んでいるからだ。
    「なんだつまらん。だがさっきのだが・・あっちの島で空島からの客人が賭けをしたそうだぞ。『ショーならそれ相応のギャラを。賭けなら私は一言一句間違えないけどきちんと書面にしましょ。1島分の霧をぶっ飛ばせばいいのね?』簡単だって笑ってた。」
    「・・・・ほう」
    挑むような気配は戦の気に似る。自分の肌が反応する。何よりも他には居るまいその口調と自信。

    「昨日鷹の目に連れられてそいつらに会わされたが、爺ばかりの中に一人だけあいつも知らない若い女が居たぞ。なんでも手配書付き、でも大事な客人なんだそうだが」
    「・・ほう」
    俺は身を起こした。
    視線のあった傘女は更にニヤニヤと笑う。
    今度はニヤニヤ笑うばかりで黙っている。


    「・・・・・・・・会いたいんじゃないのか?」


    抱かれるような大気。
    その主にも似た懐かしさを。


    しかし。

    「いいや」

    今はまだ会わない。
    会えばそれだけでは。
    まして今の自分には。


    会わない。
    俺が次の半年で遠き峰を登り尽くすまでは。




    ☆星見 (ゾロナミ)

    2010ナミ誕 ] 2010/07/03(土)
    「グランドラインに入ってショックだったのはね、この私の航海術が一切通用しなかったって事なのよ。」

    カランと涼やかな音が夜空に響いた。ナミは嬉しそうにひんやりとしたグラスに刺してあったストローを唇で取り出して上下に振っていた。先に付いた雫が俺にも一つ二つ飛んできてた。だが肩に届いた頃には温度も気にならない。
    星を讃えた夜空にぬるい風。今の海域はぬるいまま安定しているから側にあるのは春島か季節が春な島なんじゃないかとさっきナミは言ってた。
    反対の手でつくった細い拳で人の額をグリグリと楽しげにこすってる。ここに来るなりグーグー寝てたあんたに解説したって無駄でしょうけどね と持ったグラスと咥えたままのストローのせいで借金を背負わせるときのようなニヤッとやや凶悪な笑顔になってるがそれでもなにより嬉しそうだ。
    「普通のコンパスは一切効かないし、地形によって変わるはずの風は所構わずいきなり吹くし。風がそうなら波も気まま。海流はあっても法則もないからいきなりログポースと反対に向かって流れてたりするし。そして何よりあせったのが星よ。」
    「星?」
    自分の声がけだるそうに答えてる。その声がこの体勢だと結構隠って洞窟の中のように響く。

    「グランドラインに入る前にはタカをくくってたのよね。だって、地図が無くたって、もしかしたらコンパスが効かなくたって、空は変わらないと思ってたもの。」
    「変わんねぇだろ?」
    「当たり前よ。同じ星から空を見上げてるのよ?空が変わるなんて誰が思う?」

    酒に酔った訳じゃない。だがこの暖かさにぼんやりした頭はあまり働いてない。
    眠ってる訳じゃない。ただナミの声が歌うみたいに聞こえてる。
    考えるとかそう言うことも面倒で、ただ上から響くこの声を聞いていたい。

    「んなこと思ったこともねぇ。」
    右なら右だし北なら北だ。で、星は星。それ以外の何者でもない。
    「あんたは特にねーーー」
    ナミはあはははとストローを咥えたまま笑ってる。
    「でも判ってきたわ。やっぱり海流の大まかな流れはログに従ってる。行く先と方向が違うから当てにならないの。けどログを外れると元に戻るのはかなり厄介なのよ。他のログにもたどり着けない。そうじゃなくてもルフィは決めた道から外れるの嫌みたいだし。」
    「ほーーー。」
    ルフィの名を聞いて柔らかい枕を少し触ってみると軽く身動ぎしかけてすぐに受け入れた。一瞬緊張してすぐ弛緩して、今は受け入れてる。表面もはするりと奥はくにゅっとどちらも柔らかい。
    「今は星の位置なんて大まかに廻った量が判るだけ。だから今この時期にこれなら多分もう少しで半周できるとはぼんやりわかるけどね。」
    ナミは空を見上げてる。大きな胸の向こうに真っ白な首筋のラインが、その上に星空に鮮やかに浮かんでいる。
    ナミはストローをグラスに戻し、そのグラスごと手を下ろした。その白い腕の動きが視界の端でもやっとした残像になる。その手にもゆっくり触れる。自分の意識もややまどろんでいる。妙な意識も欲もなくただ触れる事だけを繰り返す。

    「でも」
    白い両の手がゆっくりと俺の顎の線に添えられた。
    「海で星を見ることがただ楽しむ為だけになるなんて思わなかったなぁ。」

    歌うように弾んでいた声が少し落ち着いた色合いを帯びる。
    指がなぞる腿の柔らかさと頭の下の暖かい触感は捨てがたかったが、俺は上にむけて左手を伸ばした。

    「ナミ」
    「ん?」

    ナミの後頭部をそっと抑え軽く下に誘う。促した動きにナミは一切抵抗しない。ゆっくり引き下ろすと柔らかいナミの身体ごと頭が降りてくる。
    ぐっと顔が近付く。闇の中、からかうように目が金に光った。口元の微笑みは身体のように柔らかい。
    「空に星、下にあんた。こんなおまけも付いてくるしね」
    「黙ってろ」

    互いの視界は遮られて閉じた瞼の後ろに星がひかる。




    この船に乗るまで星は星でしかなかった。
    だが今は違ってしまった。
    星を見、星に見られて俺たちの日々は過ぎてゆく。


    ☆薔薇月 注あり

    2010ナミ誕 ] 2010/07/03(土)
    ごめんなさいこちらは18Rにさせて頂きます。短いモノですが物理的に挿入シーンがありますので。
    今回のナミ誕の成分のその他5%はここの事で「immoral」つまり不道徳になります。
    つまり、ナミさんの相手がゾロじゃないと絶対駄目な方は不快になる恐れがあります。
    でもゾロナミ傾向です。


    続きを読む

    ☆楔 (ナミ)

    2010ナミ誕 ] 2010/07/01(木)
    海賊王になりたいというゴム人間と万年寝太郎の迷子と。正体がわかってしまえば何のことはないただの男達とこの数年のうちの常には思えぬ時間を過ごしている。
    あんな男なんてどこにでも居ると思うのに。知ってるはずなのに気がつけば私が笑ってる。

    だって、あまりにアイツら馬鹿なんだもん。笑ってやらないとどうしようもないじゃない。
    宝を手にしてもあっさりとその半分を他人にくれてやったり。ただの他人の夢を追ってやったり。仲間と見込んだからってそいつの敵と死にそうになりながら戦うなんて。ましてやこの私が特にもならない怪我までして参戦してるなんて有り得ない。
    だから私はわざとアイツら馬鹿だしと笑った。
    そうじゃないと心から笑ってしまいそうだった。私が笑うことに何かの意味を与えないと今までの私が保てないと感じてた。


    「なんだ?ウソップもルフィも潰れたのか?」
    「なんやかんや言ってもこいつらガキよねーー。こんな軽い酒ばっかで潰れるなんて!お陰で貰ったお酒をこっちが充分堪能できるってモンだけど! けどさっすがお嬢様! 保存用には良い酒積んでくれてるわよ!あんたもこっちの良い奴少しやる?」
    「おう」
    今までの航海は船が小さすぎて水と食料が限界、趣味レベルの酒まで積めなかった。そうじゃなくてもこいつらお金持ってなかったし。
    かなり飲めるらしいゾロは飲み仲間としては良かった。こちらに関わらず勝手に自分で良い感じにご機嫌になって、私に詮索もしない。ただ一気に小さめのグラスを空けて、良い顔で頭を振ってる。
    「うめー!辛ぇ!」
    「でしょーー!?この辛みと奥の深さが判るなんてあんた中々やるじゃない」

    お世辞抜きで酒は美味しかったし、酒の旨さが判る奴は嬉しかった。
    その共感に心の箍が少しだけ、ほんの少しだけ、私が警戒心を抱かない程度に弛められてしまったらしい。

    共感は心に緩みを作る。
    しかもアルコールは本人の知らぬ間に緩みを見つける。
    一番の問題は私が彼に、そして彼らに緊張しなくなったと言うことだった。気を張らない旨い酒。緩んでしまうにはこれ以上の物はない。


    「本当に旨ぇ」
    「よねーー!」
    乾杯のつもりか手を挙げながらふと相手の顔が間近にあった。アレ?と思うと視線で全身が固まっていた。言葉も忘れてただ見合ってしまう。相手の瞳ばかりが大きく見える。紅潮して見合った瞬間、瞳と瞳の間にあったはずの垣根は消えていた。
    相手の中が奥まで見える気がする。同時に相手に内奥まで見られている事も判てった。その頃には隠すよりは相手への興味が勝っていた。見られている事が恐怖どころか興奮を呼ぶ。更に相手の中をもっと見たくて知りたくて、共感が取っ払った垣根は視線だけじゃなく気がつけば肉体に及んでいた。


    ゾロの唇が自分に重ねられて。
    それが快感すぎて自分が欲しかった物だと始めて気がついた。
    柔らかく私を浸食しむさぼって私の欲をなぞってゆく。もっともっとという声ばかりが自分の耳に聞こえる。酒が理性を緩ませたと意識が気付いたときには遅すぎた。
    唇の間から舌が割り込まれた快感に自分の唇が相手をむさぼっていた。
    相手の唾液はもう潤滑油にしか感じられない。自分の唇が変質するその柔らかな快感を。絡め取られた舌が押して押されて受ける快感を。これ以上は危険だと身体の一部で発せられた信号が遠くに見える。見えるのにまるで他人事だ。彼の口腔から受ける快感に押しつぶされてその危険信号はあえなく現実の感覚の末端に押しやられてゆく。常に居る冷静な自分がこの時ばかりは何処に行ったのだろう?全く気配も感じられない。

    いつしか彼の唇が口腔から離れて自分の首筋を舐め、圧し、吸い付いているのを心地よすぎる快感と感じている。
    1ヶ所・・おそらくは窪みとなった正中の首の辺りを強く吸われることに恐ろしい程の快感がこぼれ始めた。
    その快感は私の胸にある両の突起のその先端まで甘く溶かしていた。そしてそこからつながる深い中心の泉へも。

    「・・・ゾ・・・・ロ・・・」

    甘くほんのささやかに零れてしまった声。
    だが零れた声にそれまであくまで流動的で動的だった二人の動きがホンの一瞬止まった。

    ホンの一瞬。
    けれど二人を醒ますには充分な刹那の楔だった。



    風の音と波の音、そしてそれを圧するような若い二人のいびきが私達の耳に届いてしまった。



    声を出したのは私の方。
    驚いているのは二人とも。
    でも私の片腕が軽く自分の襟元を抑えていた。
    「あ・・ルフィ、起きちゃうんじゃない?」
    ゾロは何も言わなかった。ただ彼がまだ私に触れていた部分をぎゅっと押したので私はそこから手を引いた。ホンの数mm。薄いベールのように薄い距離を。
    「・・・・・ウソップも寝相悪いみてぇだな。」
    ゾロが溜息と共に答えた。
    垣根が戻った。



    全身が別離を悲鳴のように感じていたのでそっとそれらを押し込んで封印することにした。そうじゃないとこいつらとの別れが辛くなる。
    戻った理性に舌打ちする自分と叱咤する自分の隙間で、埋められないなにかが生じていたのはこの頃からだ。



    ・・・・・・・・・・・・
    シロップ村を出た日の昔話で。
    またお預け。



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