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    蜜柑狩 '13ナミ誕
    ワンピース 二次創作 ゾロナミ傾向オールキャラ ナミ誕 蜜柑狩 小説のみの貯蔵庫

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    空と海の狭間で-10

    2007ナミ誕 空と海の狭間で ] 2007/07/23(月)
    「着いたぞ~~~~~!」

    空は青く澄み渡り、爽やかではあるが熱い風が頬をなでていく。風の行き先では椰子の木の葉がざわざわ揺れている。まだ青いけど大きな実が小さな実がついている。
    真っ白なビーチが島の左手に広がってその先にバンガローが見えていた。島の側、海は碧い。エメラルドと称されても良いくらいの海の色。家の近くの海とは色相が全然違う。同じ海だなんて思えない。
    誰もが興奮も嬌声も抑えられない。ルフィは降りる前からヘッドやマストに登ろうとして怒られていたし、やや老け顔で並べばちょっと大人なゾロですら童心に返った目が輝いている。

    もちろんナミはさっきのゾロの言葉には腹も立ったけどこんなに素敵な光景が広がってるときにそんな顔なんて見たくもない。頭の中で奴の顔を踏みつけてる自分を想像して下がりきらない溜飲を下げて忘れることにした。

    真横のビビの顔も紅潮している。どうやらさっきの真っ青な顔は船酔いだったみたいで、もらった薬は効いてるみたい。今は吐き気もなさそうだ。小さいルフィがビビを背負ってきたときにはびっくりしたけどビビはビビで何かに怒ってる様子だ。ビビが怒るとへそが曲がって黙るから今は詳しく聞きにくい。けど元気みたいだから良いか。
    「あそこに泊まるのね!?」
    バンガローは南の島特有の平たい天井だ。嵐に強く風にも強い。そしてそこから平らにのびた茅葺きの庇が良いアクセント。緑の中に浮かぶ建物に遠くには縄が見えたり熱帯樹の間の高台には広場も見えた。
    誰もが当然興奮気味だ。
    静かな水面に船は滑る様に港に着いた。




    船に乗っていたのは後発のキャンプのメンバーが20人強くらい。
    入れ替わって先発の組が代わりに名残惜しげに港に待っていた。こちらはどちらかというと子供の数よりもスタッフの方が多く見えた。車椅子が今回よりも多く見える。学校に行っていない子供用に組まれたもので、内容も本当にスローな物ばかり。
    今回の参加者の半数は一見元気に見える。もちろん病後明けの子供--たとえばルフィのような子供に比重を置いているから考え方は違うのだろう。
    (何でまぜないんだろう?)
    ナミの脳裏にちらりと疑問がよぎった。

    そして思ったより沢山のスタッフも入れ替わる。全員というわけではないがボランティアの強みで弱みなのだろう。どちらにしても若い人が多いが荷物も多い。その入れ替えだけでもかなりの時間を要する。




    まずは船から皆が降ろされる。
    「俺が一番乗りだ!!!」
    ルフィが荷物を抱えず飛び出した。
    「おい!キャプテン!忘れモンだ!」
    ゾロが船の上からルフィに目がけ赤いバッグを放り投げた。ゆっくりと放られたそれはゆるゆる回転しながらルフィの手元で加速する。
    どさっっ
    「こらーーー!アブネェだろうが!!」
    本物の船長の怒声とルフィが荷を受け取ったのはほぼ同時だった。
    「いっけねぇ!逃げろっ!」
    ウソップが一斉に走り出している。続いてゾロが飛び出した。
    「だから男子って!」
    「困ったガキだな」
    サンジが肩をすくめて荷物を肩にかけてゆっくりと降りてゆく。
    同じくらいの歳でも落ち着いてる奴もいるんだとナミが見ているといきなり方向転換して船に戻っていった。
    「いけねぇ!忘れモン! 海パン!」
    三言目が聞こえて吹き出しそうになった。所詮男子。どれでも同じかもしれない。期待もしないし失望もしない。ただ馬鹿を見る目つきを前方の港に修正してナミは自分の荷物を持って降り立った。

    今まで揺れていた船の振動が大地の安定した熱気にかわり、大地から足に力が伝わる。
    海の上の優しく爽やかな風と違う大地の熱さ。けど、島を渡る風は海と同じように優しい。
    まるで島全体に歓迎されている気持ちになってナミは目を閉じて両手で風を受けた。


    「・・やっぱり居ないし」
    横でビビが肩を震わせて呟いた。
    「誰が?」
    「あの女」
    「ああ!・・ごめん。」
    海の碧さに彼女の目的とやら忘れていたことは続けなかった。ビビがまたいつもよりぴりぴりしている。
    きっとにらんだ顔はこれで結構可愛いのだが、それを言ってはもっと怒る真剣さが全身ににじみ出ている。

    ナミはその細い指でビビの広めのおでこをはじいた。
    いくらそれが目的でも、ね!
    ほら厳しいおでこをしてるけど少しマシになった。大気や温度で鼻にも島の薫りが届いたようだ。さっきの班長ルフィじゃないけど楽しまなきゃね。ナミは思わず鼻歌が浮かんでくる。
    「ナミさんこそ、もう忘れ物はない・・・・・きゃああああああああああ!」
    言ってる横から戻ってきたルフィが脹れるビビの真ん前に捕まえたばかりのオオトカゲを見せたから悲鳴と先生達の怒声で一時大騒ぎになった。


    せっかくの上陸なのにナミは溜息が出る。
    (この先大丈夫かな?)









    「まずオリエンテーションじゃー!ルフィ君は縛られとるからそこで聞いとれよー」
    「何で俺だけっ!」
    「やかましいっ!脱走する猿には縄がいるんだ!本来は怪我人に使う奴なんだよっ!」
    先生が一人怒ってるように見える。その横でウソップのように鼻の高い先生が愉快そうに笑ってた。
    「ひっさしぶりにパウリーの技がみれたのーー」
    「いいから!これ!取れよ!」

    すぐに開け放たれた広い部屋に集められた。ルフィは柔らかくて太いマジックテープで止めるタイプのバンドで縛られて前にいる。建物に入る前に『も』ルフィが一悶着起こしたらしい。
    「落ち着かない奴ねー」
    ナミが一くさり小声でぼやいた横でビビはきょろきょろと落ち着かずに指をかみ始めたので今度はナミが頬を指でつついた。


    「このキャンプの目的は、『決して無理をしない』ってことです。私たちは、一通り皆さんが満足できる様にメニューを組んでいますが、無理な人は遠慮無く言いましょう。今日の予定は日よけの帽子を作ろう、と海辺の散策に別れます。明日はたき火で御飯を炊いてカレーを食べましょう。食事に制限のある子達はその範囲での調理をやりますので心配しないでください。そして船に乗っての島巡りはあさってです。夜にはキャンプファイヤーもありますので楽しみにしていてね!そして一番大事なところはくれぐれも一人で出て行かない様に!それからこれも一番大事ですよ!毒を含んだ生き物も居ます。むやみに触らない様に!聞いてます?ルフィ君!・・・・」


    先生の説明が長く長く続く。
    一番大事なことがこうもあったら覚えきれないではないかとナミはおなかの中で呟いた。
    こんな南国に来ているのだ、わくわくしないわけがない。その間も窓から見えるのは青い空に南国の色とりどりの花。
    飛んできた極彩色の鳥にルフィは転がって追いかけてまた縄でスタッフに取り押さえられていた。ウソップは逆に膝を抱えたまま固まっている。ゾロは話の途中からやっぱり寝ているし、サンジはにやにやと頬を緩めてる。視線の先は女先生達。彼の評価はちょっと見直してはまた下げる。
    ナミは小声でそっとビビに内緒話をする。
    「班の運だけは最悪かも」
    「ちょっと同感」
    「あいつらには構わないようにしようよ」
    「そうね」




    「それでは担当の先生をご紹介します。ただ基本的なだけで専任って訳じゃないので何処でも誰でも声をかけてください。班の人数がバラバラですが、それぞれにあわせた決定だと思ってね」

    介助の居る車いすの子供一人とそういった物の要らないナミ達では掛ける人間のバランスが違う。
    このキャンプでは誰でも手伝いが必要なら堂々とお願いするのがここのルールだと言われて頷いた。誰でも簡単なことでもヘルパーを頼んで良いそうだ。ということはどうしても補助の必要な子供に優先的にスタッフがゆくとなる。つまりナミ達は結構自由かもしれない。決められるよりは思いやりにあわせて流動的に。生徒もスタッフも皆協力する、そのバランスが大事なのだ、と先生が説明を続けた。

    「だからといって遠慮も諦めも駄目ですよ。やりたいことは一杯頑張ってみましょうね。私達も精一杯お手伝いしますから!」
    副リーダーらしい黒髪で眼鏡の先生がだめ押しのように付けた説明で皆声の調子を上げた。

    「はーーーい!」
    「可愛い先生とご一緒なら頑張りま・・・」
    サンジの声は入ってきた先生達に注がれて続かなかった。
    「では今回の先生達です」

    入ってきた人達を見て,さっとナミの背後のビビが固まった。









    自己紹介した眼鏡のたしぎ先生が一人ずつそれぞれの紹介を始めた。マイク付きだから他の話もよく聞こえる。
    「そして最後が・・・ちょっと遅れてましたけど今入ってきてくださいました。ロビン先生です。先生は医学部の三年生です。大学の前に外国で心理学の研修も済まされている素敵な先生です。この班を中心にお願いしてありますからね。この班は6人でちょっと多い方だけどみんな身体に問題は少ないもんね。遠慮なく悩みとか気持ちの相談もしてみて下さいね。」
    サンジが芯から大喜びしている。踊れといったら天に昇って踊りそうだ。

    ナミはロビンの顔をしげしげと見つめた。
    写真よりも綺麗な感じがする。少し寂しそう?
    一瞬だが視線が合い、にっこりされてドキドキした。
    けどその反面、横のビビの顔は見るのが怖かった。視線だけでたどってみてはその気配に帰ってくるのが精一杯。躊躇いながらできるだけゆっくりビビの方を見た。
    ビビは射殺せそうな視線をわずかに下に隠してロビン先生の一挙一動を追っている。指は硬く握られて口元は真っ白になるまで引き結んでいる。


    「皆さん初めまして。ニコ・ロビンです。この四日間楽しく過ごしましょうね」
    ロビン先生は見渡した。誰も目をそらしたまま答えない。
    ロビンはそれ以上答えを待たずに続けた。
    「口も身体も固まってるみたいですね。では、私からの提案です。慣れないことをするときにはいっそ新しい役割になりきってしまうのも一興よ。ということで呼ばれたい名前で呼ばれてください。さぁ、考えて!」
    「ええ~~~~?!?」

    正直。おとなしめの美貌に静かな人だろうと思った。 それは裏切られた。
    満面の笑み。からかう様な微笑み。いたずらに満ちた瞳が紫から赤っぽい瞳に絶えず色を変える。
    せめてトラブルの無いように無理難題など言わない理性的な人だろうと思った。 これも裏切られた。

    そうしたらもう、そのままを受け入れるしかないじゃないの。



    「俺!」
    すくっと左手のつもりの肩が挙がった。
    まだ縛られてたままだった。
    「俺は船長!」
    誰の予想に違うことなく・・・ルフィだった。

    「あらあら」
    ロビン先生が後ろに回ってた。
    「さて船長さん?」
    見事な縛り方だ。二本くらいしか捲かれてないのにルフィが全然動けてない。
    「名前が付いたなら外すわよ。けどその前に二つだけお願いがあるの、聞いてくださらない?」
    「わかった!だから早く!取ってくれ!」
    「ええ、お願い。一つは先生達の言うことには必ず本気で返事をしてくれる?」
    「おう!」
    「それからもう一つ。これから何をしに行くのか必ず誰かに教えてね。この二つ」
    「いいぞ!」
    「約束よ」
    外すロビン先生はまるで手が何本もあるように見えた。

    外れた途端飛び出そうとしたルフィをやんわりと、けどしっかりとロビン先生は押さえ込んでいた。
    その技に思わず拍手が出る。
    「約束は守りましょ?」
    これは適任かも。誰もがそう思った。

    「あ、じゃぁ!俺は料理人!飯の方は任せとけ!
     んでロビンちゃんには『コックさんv』って後ろにハート付けて呼んでください!」
    そう言うサンジの方が目も腰の振り方も器用にもハートだ。
    「阿呆か。」
    ゾロは心から楽しげな二人に背を向けた。
    「好きにしろよ。あんたにどう呼ばれても関係ねぇ。」
    無礼者だ。とりつくしまも礼儀もなってない。

    めまぐるしいルフィも、まるで大人みたいなサンジも不思議だ。だけどナミはちょっと不思議な今のゾロが気になった。駅ですっきりとありがとうを言ったゾロの笑顔はどこへ行ったのだろう?
    船内でも騒ぐでなし、かといってルフィの取り押さえとかは言われたわけでもないのにすんなりやってたし。
    そのわりにあまりやる気もなさそうだし、荷物に竹刀まで入ってて運動も出来そうでおよそ病気とは縁がなさそうに見えるし。
    人のことは無礼にも程があったけど。
    何故こんな所にいるのか?



    「それから……女の子達は?」
    ロビン先生は振り向いてナミの方を見た。ナミの物思いは視線に破られた。自分は一体どう接すれば良いんだろう?ビビの手前馴れ馴れしいのも可笑しいしかといって理由もないのは本当はあまり好きじゃない。
    「えっとーー。そうだなーー。んーー、いいや。特に要らないから名前でそのまま呼んで。」
    職業名というのは面白そうだがあいつ等と同じレベルで良いの?と思う気持ちもある。


    「じゃぁナミちゃん、ね?では・・。」
    「私のことは『ミス・ウェンズデー』と呼んでください。大人の人が勝手に馴れ馴れしいのは苦手です。」
    もの凄く冷たくて鋭い声だった。

    ルフィも、サンジも、ウソップも、さしものゾロもビビを見る。


    先生は手元の書類をちらりと見直した。
    「・・ではご希望通りにお呼びしましょう。ミス・ウェンズデーよろしくね。」
    ロビン先生は初めてその右手を差し出したがビビは気付かないふりで横を向いた。
    「後はウソップ君?」
    「ほら!あんたよあんた!」
    場の変化に何となく焦ってしまいナミはそのごまかしを脇にいたウソップの肩をドンと叩いた。
    「・・!」
    彼は声も出ないほど飛び上がって脱兎のごとく逃げだそうとして転んだ。
    「え!?なんで??」
    「あー貴方はちょっと話すことが苦手なんだっけ。じゃ、話すときは私の目を見ちゃ駄目よ。石になっちゃうわ。私魔法使いだから」
    うふふふと笑う声にどうも変わった人だと思う。学校の先生とはまた雰囲気が違う。

    その笑顔にサンジは大喜びし、ルフィは魔法が使えるのか??としっつこくきいてまわって、ビビは黙って睨むばかりだった。





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    空と海の狭間で-11

    2007ナミ誕 空と海の狭間で ] 2007/07/23(月)
    バンガローはさすがに男女に分かれていたのでほっとした。部屋は四人ずつで他の班の女の子が二人いた。先に部屋に入っていた彼女たちは頬を染めながら手を振った。自己紹介によるとそれぞれ四年生と五年生らしい。一人は腎臓が少し悪いのだと言っていた。もう一人は病気については何も言わなかったし、自分たちのことも話しにくいので学校名と名前と学年だけ話しておいた。それくらいしか話している間がなかったのだ。
    壁に備え付けの二段ベッドの毛布と枕をそれぞれ配られた。たたみ方の説明を聞いて、自分の荷物を片付けた。ベッドはじゃんけんで。ビビが下。ナミは上。
    一度ベッドに転がって起き上がった。上から覗けばビビはさっき配られたしおりに目を通している。
    「さて、今からはどっちに行こうか。」
    大ホールで虫の観察と虫かご作りと帽子作り、もしくは浜で海の生き物の観察。
    日焼けは嫌だが屋内の日陰よりはやはりこればビーチだろう!
    「やっぱり虫より海だよね。」
    帰ってきたのは質問の答えじゃなかった。
    「どっちだと思う?!!」
    「うわっ。何?ビビってば耳元で大きい声出さないでよ。」
    「どっちでも良いなら浜に行こうよ。あー班行動かなぁ?あいつらどうするだろ?」
    「ちがーーう!あの女よ!」
    2人に聞かれても違和感の無いように小声で、でも爆発してる。
    「えっと・・ロビン先生は担当は磯って書いてある。」
    「じゃ、きまりね」
    「うん」

    泳がない程度の海は楽しみ。なら短パンで行こう!長袖の上着は日焼け対策。





    *********





    「すっげーーーーーー!真っ青だぁ!!」

    ビーチの脇に入り江があった。岩がちなそこから降りていくと右手には真っ白な砂浜。こんなに白い浜なんて見たこと無い。砂としては足の裏にちょっとちくちくして痛い。そして白い浜はエメラルドに近い色の海に続いてる。
    海の青。いいや碧。写真でしか見たことのない海がそこに広がっている。そして空も同じ青水平線でつながった世界は広く広く。ここの空気を吸うだけで別世界に来ているトコを感じる。

    「ここの砂は珊瑚礁だからね。ただの砂じゃないよ」

    みんなで言葉もなく息をのんでいたらスタッフが説明してくれる。聞いては居たけどこんなに綺麗だなんて。

    「いやっっほう!!!!」
    「脱ぐなよーー!焼けるぞーーー!」
    「泳ぐなーーここは泳げないぞ!」

    どう見ても上にシャツを着ただけで下は水着になっていそうな男子が我先に飛び込もうと走り出した。割合元気なのはナミ達の班だけではないらしい。
    数人が駆け込んだ後には色の白い連中がゆっくりと歩いていたり、椅子ごと運んで貰っている子もいる。
    雰囲気がのんびりしていて学校のキャンプとはちょっと違う。

    「あまり陽に当たりたくない子はこっちの岩陰にお出で。カニとかいろんな魚が居るぞーー。」
    「やった!」
    「つれてって!」
    走れない子供達の方からわっと声が上がった。


    「どっちにしよう?」
    「両方!!まずビーチ!それから岩場!」
    みんなの声が南国の色に染まる。
    「運んで欲しい子は言いなさい!椅子は後で洗うから海にも入れるわ!」
    「濡れたからって泣かないでよ。」
    「綺麗!」
    「あ!魚だ!!」
    「どこに?」
    「いた!」

    そこかしこで嬌声があがる。

    ビビとナミも最初はおそるおそるビーチサンダルを履いたまま磯に足を踏み入れた。濡れても良いように足は短パン。日焼けの予防もかねて上のシャツを脱ぐ気はない。けど予想よりも遙かに温く暖かい海に改めて南国だと意識が強くなる。

    足の上に真っ白な砂。足にまとわりつくのも少し尖った白い砂。
    膝の上まで水に浸かっても足がはっきりと見えている。もの凄く透明度が高い。
    「くすぐったいね!」
    「みて!魚が来てるわ!」
    ビビはつばの広い帽子をかぶっている。裾の広めな白いパーカーはこの世界に溶けそうだ。
    人の少なめの真っ白な砂浜は見晴らしも良くてとても良い気分。

    ところが。
    「それ!」
    いきなり後ろから海藻付きの水が降ってきて、そのまま足下がよろけた。
    尻餅をついてしまい、帽子も服も一気にずぶ濡れになる。髪もみんな。
    「きゃあっ!」
    なんにせよいきなりはきつい。
    「ルフィ?何やってんのよ!!ちょっと!待ちなさい!!」
    「待ってナミさん!」
    「許さないッ!」
    砂浜のおいかけっこではどちらも条件が悪いはずなのにルフィは結構速い。身の軽さに自信のあったナミは少しショックだった。
    「おっと」
    「ぐえっ」
    追い掛けざまに砂浜で何かを踏んだ。
    ゾロの手だった。躓いたその間にルフィは距離を離して逃げてゆく。
    「何でこんなところで寝てるのよ!ルフィのお守りは!?」
    「ちょっと転がってただけだろ!」
    「何でまた寝てるのよ!砂浜見たら遊ぶとかが普通でしょ!かといって濡らされたあいつは許す気はないけど!」
    「なるほど、トレーニング向きの砂浜だよな、けど」
    ゾロがぐるんと起き上がった。体から白い砂がこぼれ落ちる。
    「いや、俺らは今からやることあるからな。そうだ、先生に見つかったら面倒だからナミ、お前あの女と誤魔化しとけよ」
    「ええ?」
    「同じ班だろ。怒られたくなかったらだが」
    「何するの?」
    「ちょっとな」



    それ以上話さないゾロに埒もあかず放って戻ることにした。
    濡れて浜に上がったはずのビビを探すと岸に近い所の岩に座り込んで下を向いている。
    「ビビ?」
    「ごめんなさい・・ちょっとナミさんの後に続こうとしたときに何か踏んじゃったらしくて・・」
    足から滴る真っ赤な血が海水に混ざり海と白い浜を染めていた。
    「ビビ!?」
    「多分貝。大丈夫、そんなに痛くないから」
    「そんな所我慢する所じゃないわ!待ってて!誰か呼んでくる!!」
    ナミはくるっと振り返った。ルフィなんか追いかけてる場合じゃなかった!駆け出すと見えた人影。

    「すみません!!・・・・・・あ。」

    よりによってロビン先生?
    どうしよ・・ビビが・・

    「どうしたの?」

    ままよっ女は度胸、あたしもビビも!

    「ビビがケガを・・」
    「ええ!!!!」

    駆けだした先生は速かった。クラスでも速いあたしが敵わないなんてと思うくらい。
    先生の後ろから走っていくと彼女を見たビビが凄い顔をしているのが目に入った。けど仕方ないじゃない。

    「大丈夫?!ミスウェンズデー!?」
    駆け寄って流れ出ている血の量に先生は蒼くなった。
    「・・大丈夫です」
    冷たい声で言うビビの顔も真っ白で能面のよう。
    「すぐに処置しないと」
    「大丈夫ですから構わないでください。きゃ。」
    ロビン先生はビビをじっと観た。問答無用で切った方の足を高く上げ、持っていたハンカチが小さすぎることに舌打ちをして当て布にしてそれを自分の白い長袖の上着で捲いた。そこからでも血が滲んで白い上着が赤く染まる。
    「さあ」
    そのままいきなり背中を見せた。
    おんぶ?
    「必要ありません、歩いていけますから」
    「無理よ砂地を舐めないで。問答無用のお姫様抱っことどちらが良いの?」
    ビビの白い顔が少し赤く染まった。唇を噛みしめている。
    「けど歩きます!ナミさん肩貸して」
    「そうするとまた転ぶの。出血も止まっていないから貴方の意見はとおらない。なら抱えていくわ」
    「やめて!」

    ビビは渋々ロビン先生に背負われた。
    もの凄い顔で。




    「良かったわね、大きい血管切れてなくて」
    外科の医師と名乗った女性は腰までのストレートなピンクの髪をサラリと流して微笑んだ。
    感染の危険性もあるから縫わずにテープで留めるだけと言ったのにその前の洗浄で使われたブラシにビビは悲鳴を上げた。
    「切れたところも少ないしちゃんと歩けるし動けるでしょう。濡らすくらいならその時に被覆用のテープをあげるわ。けど派手に踊ったり飛び跳ねたりは止めてね」
    カルテ代わりの報告書にサラリと病状をしたためる。薬も分包された物を机の上の薬の引き出しから取り出してビビにくれた。
    彼女は薄い唇をつやつやに輝かせて笑いながらビビの背後に話しかける
    「ロビン先生。幾ら外科系じゃなくてもその蒼い顔はないわよ。一体どんな重病かと思ったじゃない」
    「すみませんヒナ先生。私、焦ってしまって・・。ありがとうございました」
    「はいこっちよ。持ってってね」
    軽く言って先生はバイバイと手を振ってくれた。ナミだけが手を振り返し。

    海辺の簡易診療所の部屋を出てもビビは俯いたままだった。
    横を歩くナミがビビの肘を突いたが反応はない

    「えっと・・先生ありがとうございました」
    あたしが代わりに言うのも変な感じなんだけどビビは口を開く気配がない。
    「いえいえ大事に至らなくて本当にホッとしたわ。ごめんなさいね。私も出血には弱いので」
    切ったところが足の裏の内側に当たるところなので歩けない訳じゃない。ビビはびっこを引きながら付いてくる。
    「所であなたたちは班行動ではないのかしら?彼らはどうしたの?」

    彼ら?
    「あ!!!」
    ほったらかしのまんまだわ。あいつら何やってるんだろう?








    *************






    「浜遊びと?」
    「室内工作」
    男部屋は畳の部屋。広いからもうルフィが走り回ってる。
    「な、後で枕投げしようぜ!」
    「それはあいつらが不味いだろう」
    2人が頷いてほっとした顔をした。喘息持ちには埃の乱舞するようなことは厳禁だ。チョッパーがそうだけにゾロは知っていた。同室には斑4人と後2人の他の斑のヤツ。この部屋に泊まる連中は手足は問題がないから特殊なベッドは要らないが、その分問題は体内にある。

    「君達はどっちに行く?」
    彼らが聞いてくる。
    「・・・・浜に決まりだな。ナミちゃんとビビちゃんも先生達も水着かなぁ?」
    「俺はどっちでも良い。どっちにしてもだりぃ」
    サンジとゾロが意見をまとめたところでルフィが腕組みをして頬を膨らませていた。眉根が怒り顔だ。
    小さいのが怒ってても問題にはならないが気にはなる。
    「どうした?キャプテン?」
    不満をあらわにした声でルフィが受けた。
    「何でお前らが行き先決めるんだ?」
    「はあ?」
    彼の主張が判らない。

    「決めるのは船長だぞ!」
    「だったら行きたい所あるんなら『船長の』お前が言えばいいだろ?」
    ルフィはふくれた。
    「だから俺は浜に行きたいんだ!」
    その答えにもっとゾロとサンジは混乱した。

    「お前『も』行きたいなら全然問題ないだろ?」
    「いーーやーーだ!『俺』が行きたいところを決めるんだ!」

    だだっ子の意見にはつきあってられない。

    「・・・・つきあってらんねぇ」
    「言ってろ、馬鹿」
    「浜に来るのだって俺が決めるんだ!俺は船長なんだ!
     もう、おめぇら勝負だ!ゾロ!サンジ!俺と船長の椅子をかけて勝負しろ!」
    「あ?ガキがうるせぇぞ。」
    「やりたいんならお前が班長で船長でやればいいだろ?」
    「いちいちつきあってられるか。」

    チョッパーは穏和な奴だから家ではこういう喧嘩は無い。こういうガキの反応は道場のガキ相手みたいなモンだ。関わることはない。ゾロはそう決め込んで無視していた。サンジも更に同様らしい。相手にしてない。


    「じゃ!これでお前らの負けだな!」
    ルフィは高らかに宣言する。
    「なんだと?」
    ゾロが先に反応した。
    「待ちやがれ勝手なこと言うな!」
    「勝負から逃げれば負けだろ?違うのか?」
    ちょっと待て、それは認められない。

    「ガキの理屈だ。のれるかよ。キャプテンやりたきゃ勝手にしろ」
    サンジは向こうを向いたままあしらう。
    「おう!だからお前は俺の部下だな!ちゃんと飯作れよ!」
    「・・・・まて。誰が部下だ?」
    「お前はそれで良いんだろ?」
    「おーーし。一学年の違いってヤツを教えてやる」

    ゾロもサンジも結局負けることは嫌だ。

    「よーーーし何でも持ってこい!俺の実力を見せてやるよ!」
    「俺が負けるかよ。」
    ゾロが叫べばサンジも静かに睨み付ける。
    「おし!どっちが長く潜っていられるかだ!」
    確かに。今から浜へ行く。浜の先には海がある。透明度の高い海がある。
    男同士の決闘場が。




    *******






    ナミに軽く告げておいたゾロを含めて四人一緒にビーチからこっそり岬の方に回った。
    こっちは泳ぐ用で深いから今は入るなとさっき釘をさされたところだ。
    ほとぼりが冷めるまではおとなしくしていて、そのままそっと皆の集団から外れた。

    「ウソップが判定係だぞ!」
    ルフィの声に嫌そうに、でも頷いている。こいつはルフィとは仲良くなったようだが巻き込まれたという方が正解かもしれない。そもそも俺たちだって巻き込まれた感が強い。

    泳ぐことも潜ることも得意でもないが不得意でもない。
    自分の場合手術は胸だったが呼吸も心臓もいじった訳じゃないから傷跡の割には自信はそこそこにある。
    サンジはゆるめのシャツを脱がない。着衣で入るつもりらしい。部屋でも一気に素っ裸になったルフィとは対照的に大きなタオルで隠しながら隅で着替えていた。男同士で脱ぐのが嫌もクソもあるもんかとおもうが関係ない。
    「ルフィ。お前、俺に勝てると思ってんのかぁ?」
    「オレが勝つ」
    「・・・」
    三人の間の睨み合いも続いている。





    「せーの!」
    水中眼鏡はサンジのゆるめのシャツのポケットに入れて持ってきた。
    三人一斉に潜り込んで水中で沈んでみる。そんな沖に行ったわけではない。深度をゾロの腰の辺りで用意したのはルフィとの身長差の分だ。潜るだけなら頭を出さなきゃ良い。
    心配したウソップのゆっくりと言葉を選んだ提案は最もだった。ゾロもサンジも異存がない。自分の意見を受け入れられたウソップはもの凄く嬉しそうな顔をした。


    潜水時間を競うなら動かない方が保ちが良い。ゾロは尻から沈んで腕組みをしながら目を開けた。そのままルフィの方をレンズ越しに見て驚いた。驚いて目をこすりそうになった。
    そしてサンジはと見ればこれもまじまじとルフィを見ている。驚いて体内の空気毎吐き出してしまいそうになって呼吸が零れていかないよう口を押さえた。

    (おい!?ルフィ?)

    水中は浮力があって浮いてしまうからそれを必死に押さえている……身体を一回転ぐるんと海の底で回ってみる。手で口を押さえて。なのに足と身体の動きがバラバラ。
    なんだか動きが変だ。おぼれているといった方が近い。

    (まさか?こいつカナヅチなのか?)

    サンジとゾロは互いの目で確認をした。これはやばい。
    二人慌ててルフィの身体をつかむ。そのまま引っ張り上げようとするとルフィは首を振って抵抗した。抵抗ついでにもう白目をむいてる。なんだかおかしい。これはやばい。
    有無を言わせず砂に両足を踏ん張ってサンジは肩を、ゾロは腰の辺りをつかんで暴れるルフィを引き上げた。

    「馬鹿か!」
    「何考えてるんだ!」
    「「カナヅチがこんな勝負で勝てるわけねぇだろ!」」

    水面で怒鳴るゾロとサンジの大声に慌てて先生達が走ってきた。
    皆で引き上げたルフィの身体を確認する。呼吸は大丈夫、水もあまり飲んでないみたいだ。
    肩で息をしながら横たわったルフィがゾロとサンジを見上げてにやりと笑った。
    「・・・・けど俺の勝ちだ。オレの方が潜ってる時間が一番長かった。・・俺が船長だ。」

    「この大馬鹿野郎!」


    馬鹿に付ける薬なんてない。
    それよりこいつはチョッパーよりも目が離せない予感がする。なんて手間のかかる奴!
    「あんた達!よりによって勝手なことしてんじゃないわよっ!!!!」
    遠くから先生達がすっ飛んできた。走ってくるナミの怒号も一緒に聞こえた。
    ロビン先生は怒らない。困った顔で笑うだけだ。



    問答無用で連れて帰られて男の先生達の説教は長かった。

    もの凄く長かった。




    同じ班と言うことでつきあわされたウソップには悪いことをしたと思った。
    けどそのウソップも止めなかったんだから同罪だと先生達は言う。
    先生の怒号は半分だけ聞いて、正座は慣れてるから気にならないゾロは足がしびれて動けないサンジを見てにやりと笑った。
    俺が勝ったね。

    「お前ら、説教はここまでじゃ。今の説教の間に皆にはこれが配られとる」
    コピー用紙に日付と枠。
    「毎日、寝る前に提出。普通は楽しかったことを書けと言うところじゃが、お前らのは今日の反省文をかけじゃな!一応ワシらへの恨み言を書いても構わん、別に採点というわけではないので好きに書け」
    「ええーーーーーーー!!」
    「本人とワシら以外は見せん。そこは秘密を守る。困ったことが言えなんだらここに書け」
    カク先生はパウリー先生の話ばかりが続きそうな所を打ち切ってくれた。





    長い説教が終わり部屋に帰る前にロビン先生が声を掛けてきた。
    「サンジ君もゾロ君も良いお兄さんみたい。ルフィ君のことよろしくお願いね。」
    思わずむせた。
    あれだけのトラブルメーカーのこれでも俺たちに面倒をみろというのか?
    普通はありえねぇだろ?
    問題児は引き離されるぜ?

    ロビン先生は大胆なのか無謀なのか?
    「あ、は~~~い!わかりました!」
    横でサンジが軽やかに返事をしていた。何でこいつは先生の前での方がいわゆる良い子なんだろう?部屋で俺たちばかりの時には普通のちんぴらみたいなのに。

    先生が廊下を向こうに行って姿が見えなくなった。
    「ということでおい、よろしく頼まれろ」
    サンジが俺を指さす。お前が受けた一件を何で俺が面倒見るんだ?
    「お前の方がお兄さん適役だろ。面倒見の良いお兄さん。」
    「俺は一人っ子だ、それにお前が子守係を当てたろ。」
    「何でここまで来て子守しなくちゃいけねぇんだよ」


    「ゾロ~~!サァンジィ~~風呂行こうぜ~~!!」
    ウソップと並んで遠くからのんきに手を振るルフィの声を聞きながら、がっくり来た。
    なんだか自分は負けないはずなのに、なんだかもう勝てない気がしてる。

    「なぁ、貧乏くじって信じるか?」
    「信じたくねぇ」







    施設の風呂はそんなに大きくはなかった。7~8人くらいで一杯になるから順番に。班毎で入るように指示された。
    ルフィが脱衣もそこそこに走っていく。
    「おい片付けろよ!」
    その答えもないままどぼん!と大きな水音がした。
    「掛け湯してから入れっ!!!」
    サンジが怒ってももはや聞かないらしい。そのサンジは脱いだ途端から腰にタオルを巻いている。
    入り口のかけ湯もきちんと体を流したし、静かに入湯を楽しむ。
    「極楽極楽」

    普通はただ洗って浸かって上がって洗う。
    野郎同士の入浴ではやることはシンプルだ。

    隣に並んだシャワーでちらりと競争が始まる。

    「クソが」
    ロロノアの野郎。もう生えてる。
    ちょっとというかかなりむかつく。
    「ん?」
    「なんでもねぇ。」
    「悪かったなでかくて」

    ・・・・今のはなんだ!!鼻で笑ったな!?もの凄くむかついたぞ!!だいたい大きさとか言ってもそんなに・・。

    もう一つ横では静かに湯をかぶってる奴がいた。
    長鼻のはだれよりも長かった。
    「・・・・・・・・」
    長げぇと思って威張るなよ!
    なんのことかとウソップは首を傾けた。

    「俺も洗うぞーーー!」
    真ん中に座ったルフィに、(でかい・・)サンジは声が出なくなった。



    男の子達は適当だ。ごしごしと泡が立たなくてもいいし湯も適当に流す。泡が残ってても気にしない。
    ルフィがゾロの身体を覗き込んで口をきいた。
    「いーなぁ。ゾロのって大っきいよなぁ。そっちの方がかっこいい」
    ゾロは見返した。
    「そうか?お前の方がすげぇ。」
    ゴシゴシと泡が体を覆ってゆく。
    横でサンジが切れた。
    「そんなもん自慢しあうなよ!」

    「そうか?」
    「まぁ自慢してもつまらんだろ」
    「だってゾロのは服着てたらわかんねぇし」
    「しかし縦横に走ってるな。何度やったんだ?」
    え?
    「三回!お前のは?」
    「胸に腫瘍が一個。ちっこいガキの時の写真にその標本と写ってるのが残ってる。・・趣味悪ぃばーちゃんでな」
    え??
    「何の話だ?」
    アレじゃねぇのか?

    ゾロの胸に大きい手術跡。
    ルフィのは顔とむき出しの頚がへこんでいた。

    「俺の手術記録だ!顔と首で合わせて四回!」
    Vサインが二つ分。







    案外夜は早く床についた。
    てっきりルフィが騒ぐと思ったが既に高鼾だ。
    ゾロもサンジも案外静かにねている。
    ウソップはルフィに聞いてみたい事があったが、諦めた。今夜は口に出す練習をしておこうか。
    「な・・るふ・・ラ、ラフテルって?」
    「世界一の宝があるところだっ!」
    どきっとした
    起きてるのかと思った。
    だが直後からまた高鼾が響いてホッとした。
    寝ているときもルフィはラフテルのことを夢に見ているのかもしれない。

    (おやすみなさい)
    心の声は詰まることがない。







    『最高!で、ラフテルにはいつ行くんだ?』
    『特になし』
    『今日の夕飯のマリネの酢が合ってない。甘味で誤魔化しても食べにくいので変えてくれ。それと米の炊き方が柔らかすぎる。見たところあごの悪い奴はいないと思う』
    『朝には船の操縦法を教えてくれたクリケットさんとフランキーがいい人でした。あんなに大きな船も簡単だと笑う二人はすごいと思います。それから昼からの、もぐりっこは、どうしても必要だったんです。許してください』
    『島は最高、班は馬鹿ばっかり。班は今から変えられないんですか?』
    『文句はありますが言いたくありません』




    「で?今日は海に入ったのが3人、怪我人軽症一人と。元気で良いじゃないか」
    「他には野外活動で軽い熱中症気味が2名こちらは明日昼からは屋内組に誘致します」
    「企業からはいつもの通りトラブルは困ると釘が入ってます」
    「さて、ラフテル指名か。予定通りに船を出せるかね?」
    「本人次第でしょう」







    空と海の狭間で-12

    2007ナミ誕 空と海の狭間で ] 2007/07/23(月)
    (二日目)


    夜は結構汗をかいた。冷房は効いていたけどギリギリに設定されているから寝られないわけではないけど汗をかく。
    今朝も窓を開けるとそこから海の香りを含んだ熱気が流れ込んできた。それでも朝の風はとても気持ちいい。今朝の光も真っ青な空が予感できる。
    昨夜のご飯は美味しかったから空っぽののどとおなかに自然期待は高まる。
    朝ご飯のジュースと冷たい水。ご飯にソーセージにハムにサラダを取り放題とフルーツ盛り。
    食べ放題最高v

    なのに空っぽの食卓。

    「・・・泥棒でも入ったの?」
    質問する気で口にした訳じゃない。言葉が口を突いただけ。ビビも唖然としてる。
    「料理のほとんどがないし飲み物も・・」
    「あ、ごめんなさい!大丈夫よ!すぐ準備するからね!」
    どたばたと表舞台にまで材料が行き交っている。野菜の籠を抱えた先生は苦笑いした。
    「うーん・・・・ルフィ君がちょっと張り切り過ぎちゃったみたいで」
    「へーーールフィさんが?」
    「へーーーー?じゃないわよっ!あいつ!後からいっとくわ!」
    ナミが拳を堅く握った。その横でビビが厨房の風景に驚いた。
    「ね。ナミさんあそこ・・」
    「えーー?サンジ君?」
    厨房でくるくると手伝う姿が見える。実に嬉しそうな笑顔。

    「本当にコックさんなのかしら?」
    「マメよねーー。どっちにせよ今日のカレーにはありがたいわ。」







    「九九九、千か・・いいっ!」
    ゾロは朝ご飯の後に軽く庭で借りた竹刀を振っていた。祖母の命令でこちらに来たのだし、まだ試合への野望は捨てるつもりもない。昨夜も夜半に竹刀を振っていた。揺れる大樹の葉を相手に打ち込みを掛けた。物音に驚いたたしぎ先生がのぞきに来たが、ゾロの真剣さにほどほどで寝なさいという声だけを掛けていなくなった。
    そうでなくても習慣というのは恐ろしい物で、朝の素振りがないとどうも落ち着かない。昨日も家を出る前には竹刀を振った。
    だが今日は集中力が少し鈍ってる。祖母に言われた指令の意味がまだ解けていない。

    「ま、行けば判るから」
    「ばーちゃん。俺なぞなぞは苦手なん・・」
    「ゾロは なぞなぞ へたーー」
    「謎じゃないよ。 秘密、くらいかな?」
    「さがしものも へたくそーー」

    自分は目の前に謎があっても一切気づかず通り過ぎるタイプだ。軽い拳骨で小突いておいたがまだチョッパーの方が目端が利く。それを充分判っていて祖母が送り出したのだからおそらく謎は簡単ですぐ判るだろうと思っていた。

    が、さっぱりだ。
    だからといって必死に探すような性格でもない。

    今日は食事の後で歯を磨いて10時集合。
    予定では飯を炊く。カレーを作る。
    家でも手伝って米は研げるし野菜を切ったりしたことはあるが、飯盒など見たこともない。
    一人なら困ってしまうが班のありがたさだ。作り手は他にもいるようなのであえて手を出さなくても良いだろう。
    (力仕事くらいならやるがな)

    じぶんはちょっとのんびり……と昼ご飯前の昼寝を決め込んだ。
    それが不味かった。





    竈はある。
    飯ごうが三つ。お米はもらってきた。水はバケツに入ってる。
    サンジとウソップがクーラーボックスに野菜と肉をもらってきた。ごろごろとジャガイモに人参。包丁にピーラーにまな板になる木の板。大きなフライパンに大きな鉄鍋が一つ。計量用に紙パックのリサイクル。

    「今日は!海賊弁当を作るぞ!!」
    「何よその海賊って?」
    「全部肉」
    「阿呆か!!」
    二日目でしかないのに船長と称するルフィが仕切って、ナミの一撃がルフィに決まる光景も皆当たり前のように見慣れてきた。この年の男の子達ならトップ争いに一悶着ありそうなものだが昨日の一件以来ルフィが船長で落ち着いたらしい。もっともゾロもサンジもウソップもマイペースで形的にトップであることにあまりこだわらない性質に見える。
    「決められてるでしょ!ここ、裏庭の、キャンプ場で、ご飯を炊いて、カレー!」
    「ちぇーーーー」
    ウソップがにこにこ笑いながら身体を震わせている。
    ビビはその横でこれもくすくす笑いながらクーラーボックスの中の野菜を取り出した。サンジはそれらを手にとって物色してる。
    「カレーは美味しいよねーー!外で食べるの最高!」
    口を尖らせたルフィはふと周囲をきょろきょろ見回した。
    「なぁ。・・ゾロは?」
    「ええ?」
    沈黙が通り過ぎる。

    「居ない・・わね?」
    ナミの手の中のむかれたタマネギの皮も飛んだ。
    「さぼったのかしら?」
    「い・・いいいやや・・そん・・なきっっ決めつけ方・・よっよくな・・。」
    ビビのあっさりした問いにウソップが手を、首を横に振る。
    「そうだ!だってゾロだぞ!!そんなやつじゃねぇ」
    サンジの手は素早く横で皮をむいてるナミから受け取ったタマネギをあっという間にみじん切りにする。
    見事なみじん切りだ。

    (ビビ、アンタこれくらいに切れる?)
    (無理っっ!!手伝うとかしか言えない。ナミさんは?家でご飯作ってるんでしょ?)
    (そりゃじぶんちのご飯は作ってるけどアタシは素人よ。こんなプロみたいの見せられたら言えるモンですか!)

    ナミは次のタマネギを渡してピーラーと人参に手を付けた。ビビはジャガイモをボウルに入れた水でこすってる。そこへルフィが手を突っ込んだら水が跳ねた。足下に溢れた水にまたビビがルフィを怒ってる。

    「やっぱあれじゃねぇの?」
    「多分そうよね。疑いなく」

    作業をしながらサンジとナミが頷きあう中、頭を小突かれていたルフィが反応した。

    「あーー迷子か。俺も昨日部屋に連れてったんだよな。」
    「ええ?あんたがっ?」
    「なんだよナミ、俺じゃ悪いのかよ!」
    「だってルフィ。お前も充分迷子じゃねぇか」
    「あ、サンジのくせにひでーーゾロの方がもっと迷子なんだよ」
    「彼は最強の・・迷子?」
    ナミの辛めのパンチよりもビビの冷たい一言の方が寒風を吹き付ける。

    皆の固まった姿にビビはぷっと吹き出した。
    「しょーがねぇなぁ、ゾロの奴、俺が後で探しに行ってやるよ。」
    「ルフィ!そいつはやめとけ!迷子がもう一人増えるだけだ!んなことになったらできたカレー喰わさねぇぞ」
    「そんなぁ!」
    「きゃっはっはっはっは!」
    サンジの指摘の横でビビはといえば突っ込むどころかおかしくておかしくて笑い転げてる。
    「オラ、タマネギ終了!次は・・イモ?人参?後も俺の自慢の包丁捌きを見せますよ~~」
    「あ、けどサンジ君?料理の自慢は火じゃないの?竈に火をおこすんならルフィは無理でしょ?ってことは・・ウソップ?」
    「はぁ~~いナミさんっ!全部!俺に任せとけってなもんですよっ!ってことでウソップ!火!」
    「お・・・お俺??が??」
    「おっしウソップよろしくっ!」
    ナミはどんとウソップの背を叩いた。どかんと身体が軽く揺れた。


    どうやらこれはこの子の癖のようだと今朝あたりからようやく飲み込んだのでウソップは楽になった。
    朝食の席でもルフィにも一緒につまみ食いした自分にも同じ柔らかめの拳骨が入った。
    男友達から受けるような少し荒っぽい仕草と快活な口調。ウソップの言いたいことの半分以下で理解してくれる頭の良さ。あまり女子だと意識しなくて良いところがありがたい。同時に柔らかいくせにいきなりヘビーな台詞を吐いてるビビへのガードも下がってきた。

    うん、そう。この2人は、良い感じ だ。ルフィみたいだ。

    「や・・・って・・」みるよと答えを口の中で転がす。

    「うん、じゃぁ全部お任せするわね。ウソップ。それからサンジ君v切り物も任せるわっ!」
    ウソップが竈に向かってゆくとナミは手の中のピーラーを脇に置いてサンジに向かってウィンク一つ。
    「はぁ~~~~い!お任せあれ。あ、ウソップ次はこれだこれ!」
    野菜の下ごしらえを終えたサンジが竈に火付け用の藁を入れはじめた。そのまま細い薪に火を移す。火がゆらゆらと揺れて熱気と煙を上げはじめる。ゆらゆらがメラメラになり火が大きくなる。周囲の火におされてそして中心に置いた燃料炭が色を変え燃えはじめた。
    安定した香りとパチパチといい音がする。



    クーラーボックスからビビは肉を取り出そうとした。火の横にあったそれをサンジは柔らかく制した。
    「はいはーいビビちゃんは火傷しないように下がって俺を見ててね~~」
    「良いのかしら?本当に全部やってもらっちゃっても?」
    サンジの手元を見ていたビビが肉のパックを持って後ろに下げられた。脇にいたウソップにビビが呟くと頷いた。
    「い・・いい」
    「そうなの?」
    ウソップは答えるよりも首を何度も縦に振る。火から遠く、切り株の木陰に座ったナミも後押しをする。
    「お任せしちゃおう。っとごめん、ビビ、悪い。」
    「どうしたの?」
    「ちょっとだけなんだけどさっきから頭がふらふらするのよ。暑さ負けかな?熱中症になったらやばいからーーちょっと部屋で休んでるわ。ご飯が出来たら呼んで。ちゃんと来るから。勝手に食べちゃったりしたら恨むわよ」
    「大丈夫?」
    「ナミーずりぃーーぞーーサボるなーー」
    「うん、大丈夫よ。ルフィ、やかましい。あんたはウソップの手伝いしててっ!とにかく暑さにやられたのかも。ちょっと涼んでくるわ」
    ルフィに突っ込んで、Vサインを出しながら歩いてゆくナミの顔色は確かに冴えない。
    「あれ・・い・・いいの・か?」
    「もう少ししたら、私、見てくる。けどルフィさん、豚さんのお肉は生で食べちゃダメだと思うわ」
    皆がナミを見送る横で一人、肉に涎を垂らさんばかりのルフィはサンジにけっ飛ばされた。
    「そ・・そこ・・ちがっ」
    突っ込みどころは違うだろうと言いたいウソップの声はサンジの蹴りと共にかき消されてしまった。

    騒ぎの間に林の間にナミの姿が見えなくなった。
    「ナミさん・・・おうちじゃ料理してるって聞くけど、家庭科の実習の時もお休みしてるのよね?」








    「やべっっ!!」
    ちょっとうとうとするだけのつもりだった。
    ところが気がつけば影が変わってる。太陽が顔に高い。暑い。
    多分だが、寝過ごしたっ!

    木陰があまりに気持ちよかったから・・というのは言い訳になるまい。今の自分の顔には燦々と日光が当たってる。自分は寝るところは場所も何も選ばない。
    それにこのキャンプの日程は剣道の合宿と比べるとぬるいだけに余裕がある。余裕があると何処でも寝られる特技が顔を出す。学校の授業などかなりの率で寝ているのでさっぱり何をやっているのかついて行ってない。

    慌てて起き出し、走ろうと構えたところで靴も脱いでいたことに気付く。
    シューズの靴ひもは見事に解けていて慌てて足を入れた途端に転びそうになった。
    「くっそ」
    屈んで靴を履こうとするともつれる。頭を上げて周囲を見渡してもキャンプの位置は判らない。こうなったら人のいる感じを探すしかあるまい。ふと視界に人が影が入った。三本向こうの大きな木陰に人が座ってた。
    「?」


    そっと回り込むとオレンジの頭が座り込んで頭をぐったり下げていた。
    病人?そう思うと捨て置けない。ゾロはくれはの教えをふと思い出した。
    (意識確認は声をかけるんだよ。間違っても揺らすんじゃないよ。)

    「おい」
    肩の上から声をかける。返事はない
    「おい。お前」
    背中が少し上下に動いてた。ああ、生きてるんだと思った。けどまだ身動きもしない。
    「本当に生きてんのか?」

    「うるっさいわねーー生きてるわよ。」
    あ、しゃべった。この声と頭。合わせて間違いなくナミだ。助かった。これで連れて行ってもらえる。
    けど?
    「死んでるのかと思ったぞ」
    「大きなお世話。あんたこそまた迷子?」
    「違っ!」
    「だから声。うるさいってー」
    本当に声が響くらしい。頭を振って、だるそうだ。

    ゾロはナミの側に腰を浮かせてしゃがみ込んだ。
    「カレー実習とやらには行かねぇのか?」
    「さぼってんのはアンタの方でしょ。あたしは行ってきた所よ」
    「俺はっ・・」
    何をしていたと言えばいいのか?
    説明できない。

    「で、お前は?」
    で結局また同じ質問。これには本当にしんどいらしくそのまま答えが来た。
    「ちょっとね、だるいの」
    「ふーーーーーん」
    その後ナミがまた何も喋らなくなって場が持たなくなった。
    自分がも喋らないと虫の声ばかりが煩くなる。太陽までジンジンと音を鳴らしているように聞こえる。
    ゾロの心臓の音。これもどんどん拍動してる。なんか変だ。

    「部屋とかに行かないのか?」
    「いいの。ここが気持ちいい」
    「・・そっか、なら俺は行くぞ」
    「待って」
    「ん?」
    「ちょっとだけ」
    「あ?」
    「ちょっとだけ、ここにいてよ」
    なんて言った?
    「向こうはサンジ君がちゃんとやってくれてるから」
    そりゃ適任だが。
    「だいたいあんた一人で行けるの?」
    ・・・をい。これだけの口がきけりゃ上等だろう。言うことを聞いてやる必要なんて無い。
    と思うのにナミの腕だけが伸びてゾロの服をつかんだ。
    言いたい放題なナミは顔を上げないで呟く。
    「・・・・一人は寂しい」

    圧された声。下を向いたままだから最初は聞き間違えたかと思った。
    「?保健室ならだれか先生がいるだろ?それともロビン先生でも呼んでこ・・」
    「いい。面倒。大げさにしないで。 ちょっと休めば良くなるのよ。だから少しだけ、あんたがここに居てよ」

    ナミの顔色が悪いと思う。斜め上から見下ろすとだるそうだ。
    側にいてやった方が良いのかもしれない。
    ただそれだけなのに周囲の虫や鳥の声よりも自分の心臓の音がどくんどくんと聞こえてくる。

    「少し・・居るだけだぞ」
    「うん」

    南国の大きな葉が頭上で揺れている。幾重か重なって直射日光が来ないから涼しい風を肌が感じてる。さっき自分が寝ていたところよりもずっと気持ちが良い。何処でも寝られるので場所など気にしたことはないが、良いところを見つけたナミの才能にちょっと驚いた。
    気持ちの良い木陰に座り込むと自分の横にナミが横たわる。
    たまにゆっくり開く口元は水の中の魚みたいだ。呼吸を忘れないように吸い込んでる。
    自分も合わせて深呼吸してみた。したからといって何も代わりはないのだが。

    病人をおいていくのは気になる。チョッパーの具合が悪いときにも何となく離れにくい。何度も覗いてはくれはに『安静って言っといたろ!』とどつかれた。


    「おい、ナミ?」

    返事がない。

    「ナミ」

    少しだけナミの頭が回った。ちらりと目だけが腕と頭の間から見える。
    猫みたいな目だなと思った。
    「気安く呼ばないでちゃんと呼んで。」
    「どうしろっつーんだよ」
    「そうねーー『ナミさん返事お願いします』とか『ナミ様いかがですか』とか」
    「・・言ってろ阿呆。ナミで充分だ」
    「・・・迷子バーカ」
    「るせ」
    「ゾロ」
    どくんと言ったのはなんだ??
    「・・・・」
    「どしたの?」
    「あ、そうか。お前が俺の名前呼ぶのって 初めてだな」
    「そうだっけ?」
    「ああ」
    「嬉しい?」
    嬉しい?ゾロは考えた。
    滅多にないくらい考えた。
    「・・・・・・・・悪くはねぇが?」
    その答えがどう受けたのかわからないが、ナミの背中が柔らかく揺れる。笑ってるみたいだ。

    ゾロを取り囲む音は静かになってきた。
    自分の中も静かになってきた。

    「ねぇゾロ」

    海からの風は柔らかく肌の上を吹いてる。









    後から参加したカレーはうまかった。

    ナミがうるさいのでゾロは少しナミに遅れて顔を出した。
    「やっぱりゾロ!迷子だったんでしょ!」
    ナミが決めつけて、ビビが取りなしていた。食べる直前だったこともあって誰もがとがめようとしなかった。
    「おかわりっ!サンジがくわねぇんなら俺が貰うぞ!」
    「だめよルフィさん!サンジさんはちゃんと自分の確保してね!」
    「了解ッ!!けど足りなきゃ俺のはやるぞ」
    「ルフィさんを甘やかさないで!」
    「じゃ、あーんで食べさせて」
    ウソップがそのまま大きなスプーンですくってサンジの前に出した。ウソップは嬉しそうに笑うしルフィもニコニコそれを眺めてる。
    場の雰囲気と視線が全て自分に集まっていてサンジは口を開けた。

    「さすがサンジ君ね!美味しいっっ!」
    その頃にはナミも元気になってて、おかわりまでしていた。
    「マリモは作るのに不参加だったんだから後片付け全部しろよ」
    ゾロは反論できなかった。







    空と海の狭間で-13

    2007ナミ誕 空と海の狭間で ] 2007/07/23(月)
    「!」
    「うほーーーー!!」
    「凄っげぇ!」
    「眺め良いなー」
    「うわーーーーー」
    「お前らきちんと昼寝したんじゃろうな!」
    正午から少し太陽が翳るまでは動くには不向きだ。ただでさえ体力に自信のない子もいるので昼は大事をとる。ゆるめのエアコンの下で昼寝か休憩の指示が出た。だが昼寝など用事の習慣だ、今の彼らに暑いからとごろごろ横になってはいたが寝るなんて出来るわけがない。
    あちこちでひそひそと声が聞こえる。だが昼ご飯はお腹いっぱい食べてご機嫌ではあったから睡魔に捕まる子供もいる。ゾロとルフィのいびきは響いた。

    だがもうそろそろ三時を回った。夕方のお楽しみの時間だ。




    島の中程に人工的に作られたフィールドアスレチックエリアがあった。この島の木材と太い縄で編まれたそれは手作りの、とは言ってもこの島のコンセプト、「あるがまま」をベースにしている為に遊具の数は少ない。ブランコとネットと釣り縄の三点だけだ。
    だが、その一つ一つがとても大きい。谷の地形を生かして作られたそれは上からも壮観な出来だ。釣り縄のロープは滑車が付いていて一気に谷を渡る。渡った先からまた谷に沿って作られた階段やそれに沿って張り巡らされた巨大なネット。中程の大きな木につながれたブランコ。それらを通ってまた釣り縄のてっぺんにたどり着く。規模は小さめで、移動は多少の距離はあってもかなり楽しいコースになっている。

    「一っ番乗り~~~~!」
    「あ!俺も!」
    「俺が先だぞ!」
    「順番だ!」
    男子達が先を争って乗り込む。女子とて負けてはいない。要領よくブランコを手にする者もいるが、ネットの方はやや人気が少ない。その分空間に余裕がある。この大きな遊具に今日の参加者は15名ほど。残りの半数は屋内の創作活動に回っている。
    体力がある者が多いときによく使われている設備だ。

    「ちゃんと順番を守るんじゃぞーー」

    一番に飛んでいったゾロが釣り縄のゴール地点でVサインを出している。ウソップは腰にまでがっちり縄を巻き、サンジは片手でぶら下がって余裕のポーズで途中で手を振り、先生の指導が飛んだ。勢いを付けたルフィはスピードの落ちるゴール手前でも勢いを失わず飛び降りてポーズを作る。
    「危ないから飛ぶなっ!」
    「すっげーーーーーー!」
    先生は色々なところに散っている。並んだ最後の子が飛んだ後ろにはもう息を切らして帰ってきた連中が並んでいた。

    釣り縄は一番上にあるので下がよく見える。先生達もそれぞれの位置で各人を補助中だ。それを見つけたルフィが大きく両手を振ったら振り返してくれた。
    どこからでも視線は柔らかく、温かい。


    「シンプルだけどこれだけ大きいのって中々ないよね!」
    「これ、邪魔」
    ナミとビビはブランコが混んでいたからネットの方に先に来た。互いの移動は谷に沿った道で起伏はないが大きな螺旋を描いて移動しにくい。ビビが松葉杖をぽいっと脇に放り出した。
    「いいの?」
    「片足の方が動けるわ!」
    細い足首でビビが跳ねる。学校への坂で鍛えた足は伊達じゃない。

    「ミス・ウェンズデー?」
    背後からビビはぴくっと固まる。返事をしないでロビン先生の方を睨む目で見返した。
    「足は大丈夫?無理は禁物よ」
    ロビン先生はビビの視線に気付かないのか優しい微笑みを浮かべるばかり。

    「ええ、昨日はどうも。私の足は無事です」
    「ならいいの、でも無理をしすぎて悪くしないでね」
    「自分で判断します。それとも私、あなたにお礼を言わなきゃいけないんですか?」

    ビビの背中が震えてる。怒っているのか緊張しているのか後ろからでは判らない。
    ただナミは見ていた。ロビン先生の口がゆっくり開こうとした。
    「ビ・・」
    「うわ”------------------っっっっ!!!」
    その時獣のような声が響いた。せっぱ詰まった、救いのない声。

    「え?」
    「ウソップ君の、声?」
    さっと青い顔になったロビン先生が走り出し、ナミもビビも後に続いた。








    「順番は順番だ!」
    「俺の方が先に並んでたろ!」
    「人を押しのけて並ぶのがてめぇのルールかよ」
    「負け犬みてぇにキャンキャン吠えるな。クソが」
    数回乗ったところで他の遊具にうつったものも居る。先生も下に降りていった一人についていった。その隙間にゾロとサンジがいがみ合っている横でウソップは2人の間でおろおろしながら首を横に振り続けていた。
    ゾロの表情がゆがんでる。
    「だいたい先生達が居る所では良い子やってるくせに居なくなったらころっと変わるてめぇのその根性が気にくわねぇ」
    サンジも売られた喧嘩を引き下がるような性格は持ち合わせていない。
    「上等だ。俺だって てめぇみたいに何もしてないくせに偉そうな面見てるとムカムカするぜ」
    互いに襟首をつかんで一触即発の気配だ。
    「だ・・・だめ・・やめ・・ろって・」
    「なんだーおめぇら乗らねえのか?なら俺が先に行くぞー」
    2人の間を横切ってルフィはあっさりとロープを手にした。もっと酷いケンカになりそうに思えてウソップがおろおろしていると止めようとする。
    「きにすんな、喧嘩したいときにはやりたいだけやりゃぁいいんだ。それよりよ、この縄の方が気になるんだよなぁ」

    釣り縄はがっちりと沢山の縄でつられている。その横に一本が丁度釣り縄に沿うように下がっていた。本来は補助として渡してある縄のようだ。片方が切れたのか、とれたのかは判らない。だが本来無いところに、ちょっと外れた所から下がってるところがルフィの心をそそる。
    「こうやって・・これでつかんでターザンみたいにあっちまで行けるんじゃねぇか?」
    ルフィはその縄をつかんでぎゅうぎゅう引っ張った。そして地面を蹴って腕で体を引き寄せた。
    「お、しっかりしてる!よし!」
    一気に飛び乗ると縄はゆっくり下がり始めて弧を描いて落下してゆく。

    「よおっし!あ~~ああ~~~~~~~~!」

    縄の反対側は谷を覆う上方の木に結わえてあったらしく縄がゆっくり大きな弧を描いた。飛び出したときにはゆっくりだったスピードが下方に行くに従って速度を増す。頬に受ける風は爽快だ。緑の谷の間を渡り、ロープは一番上で方向を逆転させた。
    「ひゃっほう!!!」

    ご機嫌なルフィの声に周囲は唖然となった。
    「待て!!」
    「よせ!!落ちるぞ!」
    「戻れ!」
    「なんで上に誰もいないんだ!?」

    ルフィは復路を充分堪能して良いタイミングで勢いよく飛び込んで帰ってきた。
    「これいーーぞおーーーー!!」
    大喜びで最初に飛び出した地面に帰ろうとルフィは足を伸ばした。

    「あり?」
    が、足は指先しか届かず滑る。運動靴を嫌ってサンダルで遊んでいたツケが回ってきた。
    手は既にロープを放している。不安定になった手は空をつかむ。頭に重力がかかり引きずり込まれる。上体を引きずり込んでからだがひっくり返る。
    下にはマット代わりの網が敷いてはあるが、釣り縄用にセットされていて、今の位置からだと巧く落ちても体半分くらいしか引っかからない。
    「うわわわあわわ!」
    「ルフィッッッ!?」

    側にいたゾロが反射的にまず手を伸ばした。
    ルフィの手首までは届いた。
    だがゾロの身体も一緒に引き込まれる。
    「おっ!」
    ゾロは振り返りながら反対の手で釣り縄の足下に広がってるガード用の縄の下端をかろうじて捕まえた。だが二人分の体重は重い。捕まえることが出来た手に一気に加速がかかってゾロも一緒に下に引き込まれる。
    「おわっ!」
    「でかした!離すな!」
    網目状の縄をつかんだ手は必死に支えた。ルフィもゾロの腕にしっかり捕まっている。
    サンジがゾロがつかんでいる縄に両手を伸ばして捕まえた。全身で引き上げるが二人分の体重は重い。その落ちそうな身体をウソップが背後で必死に引っ張る。

    息をつくまもなくサンジが叫ぶ。
    「網が!抜けて落ちそうだ!」
    サンジが引いたのは保護用に設置されたネットだった。それが弛んでいたのか、二人分の体重が一気にかかったせいかは判らない。釣り縄の下に貼られた安全ネットの杭が地面から抜けそうになっている。
    縄はぎしぎしぎしぎし音を立てる。支えてある太い杭がサンジの見ている前でじりじり動き始めているのは芯から肝が冷える光景だ。
    「おい!今のうちにあがってこい!」
    「無理だ!」
    「俺だって無理だ!おいウソップ!」
    「ん・・ん・・!!」
    「先生を呼べ!!!!!」

    下ではゾロが必死に捕まえたルフィの手首を引っ張っている。ルフィも少し反対の腕を泳がせた。
    「ルフィ!動くな!」
    「けどだって!俺が縄につかまれば・・」
    「やめろ!無理だ!今動いたら支えれねぇ!!」

    ゾロもサンジも今のバランスが少しでも続いたら崩れそうだ。
    どちらもがつかんでいる両手はその重みで悲鳴を上げている。
    ルフィと、縄と。それ以上にこれからどうしたらいいのか判らない。
    かといって手に肩に腰に、そして縄にどんどん重さはかかってくる。このままじゃ絶対落ちる。下手をすれば全員で、真っ逆さまだ。もしサンジが手を離せば二人だけが真っ逆さま。どちらも地獄だ。絶対に嫌だ!

    「ゾロ!お前、有段者なんだろ!?なんとかしろ・・!」
    「関係あるか!てめぇこそ その腕はなんなんだよ!」
    「!」
    「飾りじゃねぇだろ!」


    サンジの左肩周囲は服の下では細く見えるがかなり鍛えられている。フライパンを振ることで鍛えられたものだ。風呂場で見たゾロは鍛え方のアンバランスが不思議に思っていた。だが鍛えた筋肉は判る。その努力の分量も。
    努力は頼もしさと意味は同じだ。

    「くっそ・・・・!!」
    サンジの声が絞られていく。目を閉じて力を振り絞る。これ以上落とさないように。

    ウソップの手も渾身の力が入ってる。が、脇から手を入れて支えているサンジが身を固めて動かなくなってきていよいよやばいと感じる。
    声を出せと言われても、言われても、言われても・・・・。

    「う・・う”・・・・うわ”------------------っっっっ!!!」


    叫んだウソップの方がいきなり放心した。声に魂が抜き取られているかのように声ばかりが止まるところを知らない。
    「おい?おまえ?ウソップ!どうした?!」
    固まって動かないウソップの力が緩んできた・・・と、サンジの覚悟の定まらないうちに何かが自分を引っ張っていた。
    「大丈夫!?」
    「先生ェッ!?」
    ロビン先生がルフィ達に近いところに倒れ込んでロープの先を捕まえてそしてぐっと縄を手に絡めて引いている。
    ビビがナミがサンジとウソップの体を後ろから引っ張ってる。
    「ゾロッ!!あんたも放すんじゃぁないわよっ!!男の子でしょ!」
    「る・・せぇ!!」
    後ろから引っ張るナミの良く通る声にゾロが答えた。蒼くなりかけていたゾロの顔色がうっすら赤くなる。生気と力が戻ってきた。
    ナミもビビもロビン先生の脇に回ってロープの端をきゅっと握りしめた。ビビもナミもその真っ白な手が真っ赤に染まる。
    「お前ら変に引くな!!支えきれねぇ!」
    皆はっとなった。ロープは支えることが出来てもゾロがルフィを放したら・・・・・ゾロがあげた悲鳴に皆堅くなった。縄は確かにロビン先生が一番崖の側で押さえてる。みんなで引っ張ってる。
    その先でルフィが動いたのか?押さえた縄が緩んでいるのかゾロが落ちそうだ。

    「ゾロ!放せ!」
    「言うな!」

    ゾロの所まで誰かが降りられない限りいつか保たなくなる。
    これが現実だ!
    ウソップは想像したが怖い光景など想像は出来ない。だが恐怖感だけはひしひしと押し寄せてくる。

    「や、だーーーーーーーーーーー!!!」

    ウソップの口から獣の仔のような声が上がった





     

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