蜜柑狩 '13ナミ誕
    ワンピース 二次創作 ゾロナミ傾向オールキャラ ナミ誕 蜜柑狩 小説のみの貯蔵庫

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    「Othello」1/3 (チョパとナミ)

    2008ナミ誕 ] 2008/07/03(木)
    「なんで俺がてめぇの飲む酒の用意しなきゃなんねぇんだ?」
    「サンジ君はあっちの船に乗り込んじゃった。それに『ちょっと暑くなってきたな』っていったのはアンタ。」
    「その後こういう日にはビールが美味いって言ったのてめぇだろうが。」
    額に皺を寄せたゾロが更に凶悪な目つきでジリジリとナミに詰め寄って、この天気とは裏腹に涼しい顔をしたナミがあっさりあしらっている。
    解放されて、軽い打撲傷をチョッパーに手当てされたはっちゃんとケイミーは手伝いでタコ焼船に戻っていたし、サンジはタコ焼と人魚に釣られてルフィ達と飛んでいってしまった。残っているのは飲むメンツばかり。

    「そうよー。力仕事はあんたの担当。樽で持ってくれば訓練にもなるしアタシも飲める。良いじゃない。」
    「俺がか?!」
    ギャラリーの少ない中まだ二人の痴話喧嘩のような絡み合いは続いてる。今度はナミの顔に凶悪な光がにやりと浮かんだ。
    「はっはーーん、判ったわ。あんた酒樽の位置がわかんないのね?それともこのサニーの中で迷うのかしらぁ?」
    ゾロが未だに予定外の所には足を踏み入れないこともナミは重々承知のうえだ。
    「・・ばっ・・ばかも休み休み言え!なんで俺が・・!」
    頬を染めて今までとは打って変わったゾロのやや後ろ向きな言葉にナミはたたみかける。
    「じゃ、いいでしょ? あら?フランキーは何処行くの?」
    フランキーの顔が少し歪んで微笑んでいる。どうやら笑いを堪えながら助け船のようだ。
    「どうせ俺様もコーラ取ってくるからよ。一緒に行こうぜ。」
    いつもの事ながらナミにやり込められて上下に揺れるゾロの肩にフランキーはポンと手を置いた。
    「あら、良かったわねー。」
    見送りに手を振りながらにやにや笑うナミの横でロビンも笑いを堪えるのに必死な様子だ。まだブツクサ言っているらしいゾロを慰めるようにフランキーが背中も叩いて立つように促した。ちっと舌打ちしながらゾロもその助け船に乗り、振り向きながら船内に向かう。笑いながら歩いて、太いフランキーの腕がどんどんガシガシゾロの背中を叩いたらしく、最初は黙っていたゾロがいいかげんにしやがれ!と噛みついてもフランキーは笑ってる。
    クスクスとロビンも笑ってる。
    この二人の大きめの男が乗ってもサニーにはまだまだ余力がある。フランキーみたいに良い船だ。船の上に渡る風も気持ちよい。
    さて、こんな良い船で今は平和。美味しい料理の登場を待ってる。
    「ねぇロビン、『これ』・・しない?」
    ナミの手元にはボードゲームの盤があった。薄い白黒の石を裏表に合わせた牌を交互に盤の上に配置する。相手の石を挟めば自分の色に変えることが出来る。最近ロビンに教わったこのシンプル過ぎるゲームが今のナミにはお気に入りだ。
    「いいわ」
    カランとコマを盤に乗せる音が甲板に響く。向こうの船の喧噪の中、乾いた軽い音が風に響いた。

    向こうの船の喧噪はいつもののどかさでブルックが違和感なく融け込んでいるのも微笑ましい。タコ焼の下準備と、サンジはその始まりからずっと興味を引かれているらしい。

    ゾロとフランキーと入れ替わるようにハチの手当てを自慢の診療室ですませて送り出し、道具を片付けたチョッパーが満足げに出てきてその脇を通る。
    甲板に流れ出した匂いにその鋭敏な嗅覚を刺激されたかチョッパーの鼻がぴかぴかに青く光ってる。目的の船に大きく手を振ってさてと走り出そうとしたチョッパーの耳にパチンと言う音が響いてその足を止めた。自分のコマをもてあそぶナミの姿に目を止めた。

    このゲームなら最近チョッパーも少しロビンに手ほどきを受けたからルールは判る。師匠役のロビンが打った手を受けるようにナミが返す。それをあっさりとロビンが覆して彼女の色に盤を染めてゆく。まだ始まったばかりとはいえ早速盤の色は黒。一方的にロビンが優勢だ。


    ゲームに興じているのは二人だけでここに立ってるチョッパー以外他には誰もいない。
    ふと、これを聞くなら今しかないと本能的な思いが沸きあがってチョッパーはナミの横に立った。
    ゴクンと唾を飲む。
    「なぁ、ナミ?」
    「ん?なぁに?チョッパー?」
    「・・・一応聞いておこうかと思って。」
    「なぁによ?」
    ナミは盤上から目を話さずチョッパーのやや重い問いに気付かない。

    「あのさ、ナミの、ハチとの・・魚人との因縁ってオレが聞いても良いか?」
    深く吸い込んだ呼吸でちょっと早口にチョッパーは一気に言葉にした。

    ナミは動かない。
    チョッパーも動けない。
    反対に心拍はぐんぐん上昇を続ける。

    「い・・いやっ・・そのっ聞いたらいけないんなら聞かないゾ!」
    チョッパーは首をぶるぶる振りながらも視線はナミから離さなかった。ナミはちらりと首を回した。
    「けど・・あいつ・・治療中にルフィやゾロの昔話はしてくれたけどナミのことになると言葉濁すし・・もの凄く申し訳ながっておびえた目をするんだ。、その・・あいつ良い奴だと俺は思うし・・・」
    ナミは大きな瞳で一度だけじっとチョッパーを見つめ、そのまま視線を元に戻した。

    黙ってまた盤面に向かう。
    盤面だけをきちっとみながらそのままの姿勢でパチンとナミが一手打った。
    その向かい側でロビンも動かなかった。
    二人が見ているのは盤面だけ。その盤面は更に、真っ黒い。
    合間を開けずにパチンとロビンが返した。

    「そうきたか。」
    ナミのリラックスした口調にロビンは先程からのほんの少し胸の中にいたわだかまりを口にしてみた。
    「いいの?因縁のあった相手なんでしょ?」
    ナミの動きが止まった。
    「他ならぬアンタには判って貰えると思ってたけど?」
    ロビンは少し首を傾けて微笑んだ。
    「私には判るようには思うけど。でも貴方の気持ちは貴方だけのものよ?彼は困ってるみたいに見えるし。」
    「ってな訳じゃないけど・・・けど俺が気がつかないでナミが嫌な想いをすることを口にするのは、俺が嫌だなって思ったから。」
    しどろもどろと、しかし語尾は力を含んでくる。


    二人の間では手元のゲームが中盤に進んだ。ようやく火が入ったらしく良い香りが風に乗ってきた。
    「・・いい匂いがしてきたわ。ゲームが終わったら食べられそうね。」
    ナミは指に挟んだ牌を口元に寄せて盤面を見ながら口にした。その指はリズミカルに揺れて牌を追う目は何手か先を読んで戻ってゲームに集中しているようだ


    このままナミが動かないのならば立ち去るべきか。チョッパーはそう思った。
    そしてこのことはすっかり忘れる。それが仲間に対する礼儀というものだし、男の取るべき態度だ。
    この船の男達はそう言う点で非常に誇り高い。何を教わらなくてもチョッパーにもそれは染みこんでいる。

    「じゃ・・」
    「聞きたいの?けど全然たいしたことない話よ。
     えーーっとね、あいつらにねーアタシの親代わりの人を殺されたの。島の人も何人もね。んでアタシはそのまま支配された村の為に8年奴らの下で騙されてただ働きさせられてた。そこへあいつらが乗り込んできてハチの仲間をぶっ飛ばしたってこと。終わった話よ。」
    パチン。またナミの白いコマの手は大きく響く。

    盤は半分以上埋まって、その盤面のほとんどが黒い。だがナミは冷静だ。
    言葉の殺伐としたイメージとはかけ離れてその態度は眼前の只のゲームの域を超えない。口にされた言葉が伝えるイメージとその口調には天と地ほどの解離がある。

    だがチョッパーの方がその言葉に引いた。
    あのハチが・・殺した?

    「あわ・・あ・・おれ・・」
    聞いてはいけなかったのではないだろうか?


    ようやくナミはチョッパーを見上げて振り返った。
    と同時ににっこりと微笑んだ。静かに、本当に普通に微笑んで軽く手を振った。
    「けど本当に終わった話なのよ。だからアンタが気にすることないわ。」

    「ナ、終わったって言ったって・・・。」
    ちょっとそこまでとは思ってなかった。
    どう言葉を繋いだら良いんだろう?ナミをどうやったらこんな過去から守ってあげられるんだろう?



    ふうっとナミは溜息をついて肩をすくめる。視線をタコ焼船とは反対の海原に漂わせる。次の一手に迷っているのか手に持っていた牌をもて遊ぶ指先も虚無感を否定しない。何も言えないままもっと続くかと思っていた沈黙はナミの自嘲の重みを含んだ声に打ち破られた。

    「ねぇチョッパー。被害者とか、身内を殺されたみたいな不幸にあった女の子はいつまでも笑っちゃいけないの?それって変だと思わない?」

    軽やかな声。その裏に響く重い問い。



    言葉が出なかった。
    その言葉をチョッパーは肯定も否定も出来なかった。己の身に引き替えて、只想いを馳せるのみ。
    ドクターの亡骸。乾いた涙。
    ドクトリーヌは共感してはくれなかったが、同情もされたことはない。

    だがナミは変わらず笑っていた。

    ナミは本当にチョッパーの答えを待っているわけではないようだ。
    「親を殺された可愛そうな少女が笑おうもんなら『なんで笑えるんだ?』って聞く人って絶対にいるのよね。」
    笑みに精度が増してナミはコマを左の手に取った。

    「けどね。怨みが一瞬で昇華される事って、本当にあるのよ。」


    「ほら、こんな風に。」


    細いナミの指がそっと指先のコマを盤に乗せた。パチン、と乾いた音がして白いコマが置かれる。次々とナミは黒のコマをひっくり返し始めた。そのコマの周囲の色が次々と変わっていく。
    盤面のを埋めていたあらかたの黒がその一手でひっくり返って一気に白くなる。


    「ほらこんな快感。アンタも覚えがあるでしょ?」

    夜桜がチョッパーの眼の裏に甦った。
    横のロビンは息をのんでいた。形勢のいきなりの逆転と同時に一瞬、遠い目付きをした。
    きっとロビンはロビンで海の上で燃えさかる煙にまみれた沢山の船を思い描いたとチョッパーは確信した。

    「あいつらが過去も怨みも一所にぶっ飛ばしてくれて私の世界もいきなり色を変えたわ。島に戻った笑顔と墓の前に置いて来ちゃった。けど、失せた面に黒は残ってる。消える訳じゃない、けど居なくなるのよ。気持ちや心もこんなじゃないかな?消えないけど考えないことも出来る。アタシにはその力がある。」

    ナミの笑顔は眩しかった。
    嘘とか虚勢じゃない本物だ。

    「怨みってのは勝てない相手に持つもんだと思うのよね。今のアタシ、このゲームと同じよ。あいつらに負ける所なんて一つもないし。」
    「あら、次は私が勝たせて貰うわよ。」
    「どうぞ~返り討ちにしてあげるv」
    そのまま盤面には笑顔と美味しそうな香りが混ざりつつある。

    判る・・・ような気はする。
    まだ判らないようにも思う。
    ただ、今のナミの笑顔が綺麗だから、それ以上はオレの言う事じゃないとチョッパーは判った。

    「ほら、焼き上がったみたいよ。」
    ロビンの言葉がチョッパーの背中を押した。
    「おう、行ってくるぞ!」
    「アタシももう一勝負したらそっちで食べるわ。」


    船の中から出てきたゾロとフランキーがちらりと見えた。
    躊躇いのない軽やかな声にも送り出されてチョッパーの足取りも軽くなった。

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    「Toy」2/3 (ナミとロビンと)

    2008ナミ誕 ] 2008/07/04(金)
    「勝負の前に一服しない?」
    もう一勝負といった声はロビンの指さす方向に上がってきた二人の姿に頓挫した。
    指定した大きめの酒樽ではなく酒飲み二人が隠しておいたとっておきの方をゾロが抱えてきたのが見えたからだ。

    「あいつめ・・けどロビンも飲む?あれは良い酒よ。」
    「私はコーヒーが良いけど、よく探し当てたわね。」
    「迷子だけど一番大事なもんだけは嗅ぎつけるのよ。」
    「例えば貴方とか?」
    「ええ。それは当然。あと、ルフィとか揉め事の中心とかね。」

    七武海のくまに『出来た子分』と褒められた時には照れるも、ナミはその辺りには全く照れはないらしい。
    ロビンは声を潜めて聞いた。

    「そんな男で良いの?」
    「アラ、そんな男が良いのよ。」
    「ごちそうさま。」


    近くの芝生の草の音がざわざわとして、樽をこの男にしてはそっとナミの前に置いた。
    「おい、持ってきたぞ。」
    「うむ、ご苦労!」
    「そう思うなら少しは俺の借金減らしやがれ。」

    にやりと小振りな樽を間にナミと額を突きあわせる距離でゾロは唸ってみせた。
    言っても無駄とは知りながらも口元は笑ってみせるが目は笑っていない。

    海王類さえ射殺すような視線に睨まれていてもナミはにっこり微笑み返す。
    そのまますいっと唇を左の頬に寄せてゾロの耳元の側に軽いキスをした。
    「はい、運び賃。」
    「!」

    不意を突かれて何者にも動じない男が怯んで身を引いた。顔中真っ赤になってる。
    ちょっと言葉も継げなくなった。

    「・・・・こりゃ手付けだな。残りの支払いは夜に、だな!」
    「さぁね。これでも充分だと思うけど?ま、あんた次第だし~。」
    「おい!」
    また始まりそうな痴話喧嘩の阿呆らしさにロビンが肩をすくめるとフランキーと目があった。
    男同士、向こうで何か聞いたみたいで口元がニヤニヤしてる。

    「おいロロノアーーグラス忘れたろ。」
    「また俺かよ!」
    「アニキの言うこと聞きやがれ」
    「けっっ!アニキはやめろ!」

    むくれながらもまたキッチンの方に駆けだしていく。存外気のいい男だ。

    「これからだったのに。」
    ナミはフランキーに少し頬を膨らませてる。
    「もっと遊びたかったのかしら?」
    「よせやい。見せられるこっちの身にもなりやがれ。」
    その答えににこっとナミは笑う。食料庫のあるキッチンの方を見る彼女の横顔は柔らかい。

    「チョッパーにはわかんないのかしらね?晴れて自由になって。居たいところに居たい男と一緒に居られるって言う現実があれば大抵の事って乗り越えられるって。」
    「最高の玩具だものね。」
    「おいおい、あいつが可愛そうになってきたぞ。」
    フランキーは肩をすくめてコーラの樽を抱えた。


    共にいられるのは恋だけじゃないからだ。
    絶対の信頼を得られる相手だからこそ過去にとはいえ傷ついた心と身体に染みこんで既に分かち難い。
    得られて満足できて、だからこそまた一人で立つことも出来るのだろう。
    独りで立ちながら甘えるときには無意識で玩具にするナミの横顔に沢山のものが浮かんで、日差しの中に溶けてゆく。





    「Sky」3/3 (ナミ)

    2008ナミ誕 ] 2008/07/05(土)
    銃声をきっかけにオークションハウスで乱闘が始まってしまった。
    私の身体の中に、ある感情が渦巻いている。
    喧噪の中だというのにチョッパーの疑問が浮かんで少し笑ってしまった。
    あの子も親代わりを殺されたというのにその問いを口に出来る。その優しさと残る幼さも彼の魅力だ。

    敵(かたき)と付け狙ったり憎しみを募らせるようなのはもう終わってる。
    今の私にはもう持ち続けるなんて出来なくなってる気持ちだ。
    全てをあの青い空の下、蜜柑の香りが吹き抜ける崖の上のベルメールさんの所に置いてきた。



    その朝の空の色は覚えてない。
    けど始めて持てた全てを受け入れる覚悟には後悔は微塵もなかった。ただ興奮の中、状況の全てが絶望にそのコンパスを向けていた事は判ってた。

    なのに。
    ただ一手。遠いプールサイドでゾロの示した親指一本があれほど雄弁とは知らなかった。
    戦う意志に心も体も抱きしめられて背中から押されて居ることを確信した。
    もう逃げる必要なんてないと判った。
    皆が居てくれていることにどんどん安心していった。

    建物が崩壊して始めて気がついた青い空に、アーロンはルフィの拳を受けて叩き落とされた。
    私を捕らえていた世界のガラスが割れる音がして、もう私は彼らの仲間以外の何者でもなくなっていた。


    そしてもう一つ、遠い空島でようやく判った。
    自分一人の身を守るよりも大切な未来につながる繋がりを。

    自分の安全を自分で得なくてはいけないとずっと思ってた。自分が仲間の誰かに頼るなんて考えたことはなかった。エネルが何を考えているのかも見たかった。だから付いていった。
    だが。
    太い蔓の葉の上で私達はゾロ達がやってくれることを疑わなかった。
    敵を見据えたら決して諦めないルフィの心の強さを知っていた。
    だから判った。
    ゲンさんに私達を預けてアーロンの銃口にひるまなかったベルメールさんの選択も一つしかなかったのだ。


    自分の小ささを知ったからこそもうひるむ必要も畏れる必要もない。
    私がするべき事は決まっている。それを躊躇う必要はない。
    私の迷いは空の上に置いてきた。



    確かにあいつら魚人が何をしたかを忘れる事は、多分一生ない。
    なかったことにはならない。

    それでも。

    島の中だけに起こっていたあの世界の小ささを、今は身をもって知っている。子供の頃あれほど逃れられないと正面から戦うことなど出来ないと諦めた大きすぎたはずのあの世界は、今の自分にはこんなに小さい。
    小さすぎて、私を捕らえて縛る事なんてもうできやしない。



    ハチはもう私の敵じゃない。
    敵わない相手でもなく、届かない敵(かたき)でもない。
    私の許しにホッと胸をなで下ろす事が出来る、きちんと生きてる人だ。
    己の責任を知って、相手への気持ちを忘れない、私と同じ、いや、おそらくは私よりも弱く小さい生き物だ。


    だからあいつが只理不尽に殺される所を黙ってなんて見ていられない。
    何故そんな無法がまかり通るのか。
    信念も矜恃もなく、人の命を奪う事が何故そんなに安易なのか?
    奪われた私だからこそ無言の声で尋ねたい。


    ルフィの一撃は当然の天檄。
    隣で刀の鯉口をパチンと鳴らす音がして身構える私の手がクリマタクトを無意識のうちに探してる。


    これでいいの。そして皆が走り出す。
    『ルフィだから しょうがないわ!』



    end




    How long?

    2008ナミ誕 ] 2008/07/09(水)
    ちょっと12R(12才以下読んじゃダメ)位なので続きに隠します。
    続きを読む

    「fondling」  4/3 (ナミゾロ)

    2008ナミ誕 ] 2008/07/29(火)

    「おーいゾロー!ナミさんそっちに居ねぇかぁ?」
    サンジ君の声は少しだけ高くて結構通りが良い。甲板で呼んでるのに良く聞こえる。
    足元でがらっと大きな音がした。真下の見張り台兼トレーニングルームの窓をゾロが勢いよく開けたのだろう。
    「ああ?こん中にゃぁ居ねぇぞ。」
    こっちは少し低いくせに静かに染みこむ声だこと。


    一般に共同生活が続くと、人との距離の取り方がトラブルになることもある。だがこの船にはそう言う問題は少ない。同じ空間にいても銘々が勝手なことをしていることなど珍しくもない光景だし。蜜柑の世話の時にはそこが私だけの領域とも思う。それでもたまに。ホンのたまには話しかけられたくない・・どうしても一人で居たい時間というのはあるけど、それはこの船ではなかなか望めない。仲間は皆楽しいし大好き。だからこれはただの贅沢、なんだろうけど。


    芝の甲板で騒いでいた三人が首を揃えてゾロを見上げたが首を横に振られて肩をすくめた。
    「お茶とご所望のデザートをお持ちしたんだが・・ま、いいか。今は気分じゃいらっしゃらないんだろ。おし、おめぇらには飯だ。ありがたく喰いやがれ」
    「やった!!」
    「テーブルの上に並べてあらぁ!」

    チョッパーとウソップの足音が響いて聞こえてる。遠くなる笑い声と共に食堂の戸の閉まる音がした。
    外はやや暮れかけて茜の色もやや群青に染まりつつある。コックのくせにこんな時間に菓子をたのんでもサンジ君はアタシに甘いから極上の持ってきてくれる。おそらくは食事に負担のない何かを。それにウソップだってチョッパーだって。それぞれに言うことを聞いてくれる。
     それは判ってる。
    けれどその判りやすい甘さからも今は遠くにいたかった。微妙すぎて自分が整理できない状態では心がほどよい距離を保つが面倒で。気が置けないことと甘やかされてる事の両立はなんとなくだが今は嫌だ。片づいてしまった問題にほんの少し引っかかった澱みたいな些細なのに複雑な気持ちのまま優しいみんなの前には立ちたくなかった。
    何があるわけじゃなくって。そう、ホンのちょっと。思い出すと複雑な気分になっただけなのよ。



    「おい。」

    声が聞こえた。
    ばれた?まさかね。アタシきっちり隠れてるのに。

    「おい。」

    返事をする?だって今は気配もかなり消してある。この角度だし絶対判るはず無い。

    「おい。」

    ゾロの声が上に向かって聞こえる。間違いなくあたしの方に向いてる。
    「ナミ。」


    ここは夕方の。サニー号の一番上の見張り台兼トレーニングルームの屋根の上。マストよりも上で下から見てもその影になるところにアタシは座ってる。ゾロの声はその窓の下から聞こえてる。

    答えたくない。 けど無視も出来ない。



    「にゃ」


    どちらも選びかねて細い声で返した。答えたのはアタシじゃない。ただの猫よ。
    「おい。」
    「にゃぁ」
    声は抑えながら答える。
    「泥棒猫かよ。」
    ささやかな声とボリボリと頭を掻いてる音が聞こえる。困ったときのあいつの癖だ。
    「にゃっ」
    ちょっと勝った気分。
    このまま猫でも良いかも。

    「お前が猫なら」
    繋いだ声がぶっきらぼうなのに良く通って聞こえる。
    「そろそろ降りてくるか?」

    これには答えなかった。
    ゾロのあっさりした気配がする。
    諦めたような声。

    「そうか。猫で、誰にも会いたくねぇんならそこが良いだろ。」
    ゾロはあっさりそう言った。
    「てめぇが思い出したくないことが消えたら降りろよ。」
    一方的にそう言うとカタンと音がした。手が窓に引っかかる音?ゾロ?そのまま部屋に入るつもりなの?窓の中に顔を引っ込めた気配もする。

    「ちょっと!」

    思わず言葉が出てた。ちょっと?確かにアイツらしいというかアタシの事なんてどうでも良いんでしょうけどだからって気がついてて放置するってのは無しじゃないの?
    声かけたんなら最後までもう少し絡んでも良いでしょうが。アタシがここにいるって判ってるくせに。

    動く音は止まった。そしてししっと笑う声が漏れ聞こえた。
    「おめぇ猫じゃねェのか?」

    ちぇ。
    「・・猫よ。手配書にもあるでしょ。」
    へぇって?猫だから答えなくても良いじゃない。
    猫なんだから、言うこと聞かなくても良いじゃない。

    「猫か…猫なら来いよ。」

    いきなり左手が伸びてきて驚いた。ゾロが見えてる。窓腰に立ってアタシに手を伸ばしてる。って言うかアンタいつの間にそこまで登ったのよ!?

    「なっなにっ?」
    「撫でて欲しいだろ?」
    「なっっっっっ・・・!」
    直接に誘われてるみたいな言葉にナミの頬は夕日よりも真っ赤になった。ゾロは気付いてないのか頓着せずに続ける。
    「?。猫って撫でられたがりじゃねぇか?ガキん時には触れ撫でろってノラでも飼い猫でもしょっちゅう俺ンとこきてたぜ?」
    がくっと力が抜けた。と同時にちょっとむっとする。
    モテモテでしたか、って睨んでやりたくなる。

    「怖がんな。」
    威嚇する野良猫かおびえた野生の子虎に伸ばすようにゾロはその左手を更に伸ばしてきた。
    「怖がってなんかっっ」
    「だったら来い。お前猫だろ?ここだ」
    ゾロは窓際でポンと曲げた膝を叩いた。
    「悪さしねぇからよ、来いよ。撫でてやるから。」

    想像した。
    小さなゾロの手が猫の柔らかいお腹を撫でる。
    大きなゾロの手がアタシの髪を、胸を、足を撫でる。ゾロの腕の中で。あの大きな手で撫でられる。

    ゾロの手を感じる自分の肌の触感がリアルに思い出されて背筋がゾクッと身震いした。
    かすかに吐息がこぼれる。


    「にゃぁぁ。」

    気がついたら釣られたアタシも窓の中に降り立ってた。ゾロの真横にそっと立つ。髪の毛ごとガシッと大きなごつい手に捕まえられた。
    そう言えば、何でアタシのこと判ったんだろ?

    「・・・・何があったとか聞かないの?」
    「何をだ?」
    「何か。よ。」
    「しらねぇ」
    「本当に?」
    「しらねぇ」
    「じゃぁなんでここにいるって判ったの?」
    「しらねぇ」

    ゾロの返事が素っ気なさ過ぎて。なのに声とこの手だけは優しすぎて。
    他のことも地図を読むことも、甘やかすことすら船内一不器用なくせに。

    「…何っ考えてんのよ。」
    「なーんも。」
    「あのね。何があったとかじゃないのよ。」
    ゾロは左の腕をゆっくりと滑らせる。首の後ろとか肩とかにも触れてる。全然滑らかとか慣れてるとかじゃない。むしろ不器用な動き。なのに。
    「聞く気はないわけ?」
    「何をだ?」
    訳わかんない。
    なのに心地よい感覚ばかりが理性を裏切るように触れられた所が緩んでゆく。
    何だか緩んじゃった。

    「も、いいわ。」
    しょせん自分にも判りにくいのだ。最初からどことなくもやっとしてるだけなのだから。預けた感覚はもう、身体に任せた方が良い。
    トン、と寄りかかって自分の身体ごと全部をゾロの腕の中に預けた。
    驚いたのか撫でていた腕は止まった。けれどそのまま預けた身体をやわやわと抱え込んでくれてる。
    これで甘やかしてるつもりなんだよね、この男は。
    「相変わらずね。何も聞かない。」
    「ああ?」
    全然聞いても居ないし聞く気もない。なのに私が欲しいものを持ってる。
    ただの馬鹿だから。
    だからきっとモヤモヤしてただけのさっきなのに、今はこの腕の中にいるんだ。

    もう一度ゾロの手がゆっくり持ち上がってアタシの頭を撫でた。今度はこれまで経験したことがないほど優しく髪を撫でている。
    重い黒刀を難なく振り回す無骨な手に似合わぬ、いつもにない優しい動き。
    「いつもと違う。」
    「猫だからいいんじゃじゃねぇか?やりたいようにやりやがれ。お前が猫になってケツまくって逃げたところでかまわねぇ。」

    ああ、もう。アタシの不安を思いの外優しく溶かすこの手がここにある。
    あまりの気持ちの良さに蕩けてしまう。




    猫のアタシは最後に身体を起して奴の顎から頬を舐め、唇を近く近く寄せる。
    寄せるような薄さからちょっとずつ濃く絡み始める。どんどん舌を絡めて少しアタシは上から奴を押さえつけた。

    「ねぇゾロ、今からしよう。」
    返事は低い声で小さくにゃぁと聞こえた。優しい手はもっと優しくなって本当に身体の奥が疼き始める。



    end




     

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