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    蜜柑狩 '13ナミ誕
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    空と海の狭間で-26

    2007ナミ誕 空と海の狭間で ] 2007/08/23(木)
    来たのは見たことのない小さな船だった。
    「おめーらーー無事かーーー!!?」
    ライトを煌々と照らして小さな割には機動力のある船だ。中からフランキーとその仲間のザンバイが大声で呼びかけながら手を振っていた。こちらも甲板に出て大声で騒ぎ立てる。灯りの付かない今、4人にはそれしか思い浮かばなかったのだ。

    「フランキー!たすかった!・・・けどなんでここがわかった?」
    サンジの問いにフランキーはにやりと笑って軽く握った大きな手の拳骨をサンジに一発落とした。
    「こいつらは親子みたいな船だからな。独自の電波を出させてる。それは電気系統も別にしてあるからな。おめぇらの足取りなんて全部見えてた。途中航路からもずれてって冷や冷やしてたけどな。それでもよくぞこの船にのってってくれたと思うぜ」
    拳骨は軽いのに重くて痛かった。だが今はただありがたい。
    ウソップも一発喰らった。ちょっと痛くて潤んだ目になったけど嬉しさが溢れてくる。
    ルフィは二発。
    「何で俺だけ二発?」
    文句を言ってもフランキーは取り合わない。

    「ビビッ!無事なの!!!」

    ロビン先生は真っ青で、それでも真っ赤に充血した爛々とした目で二つの船を繋いでいた縄ばしごから飛び込んできた。
    いつも冷静に落ち着いて、しつこいくらいのビビの挑発にも表情一つ崩さない彼女にしては想像も付かないしおれ具合だった。
    彼女の真っ白な両手はビビの両手の肘の上のあたりをぎゅっとあらん限りの力で握って離さない。爪どころか肉まで食い込むかと思いその痛みを感じながらもビビはロビン先生の半端じゃない迫力になされるがままで何も言えなかった。他の誰よりもまずはビビが答えるまでその手は離さない。


    初めて名前を呼んだ。

    ロビンが、ビビと名を呼んだ。
    はっきりと、でも震える声で。

    ビビはこの相手に安堵したのか自分でも良く判らなくなった。
    膝の力が抜ける。心の力も抜けてくる。けど今はそんな場合じゃない。
    自分の中から言葉をつかみだそうとしたら涙のほうが目より先に鼻からこぼれてくる。
    捕まれた腕の痛身を伴う確かさに今、ビビはすがりついた。

    「ナ・・ナミさんが・・海に・・飲み込まれちゃっっ。私の!!私のせいで・・・!」
    「何ですって!ナミちゃんが?」
    ビビの泣き顔を覗き込んだロビンは視線をあげて外を見て、又ビビを抱いた。
    「ナミさん・・途中で高波が来て・・それから・・」
    「ゾロもいねぇ。同じ時に多分」
    サンジが横から答えた。
    「呑まれたのね・・・・・・二人バラバラに?」
    サンジとビビは顔を見合わせた。どうしよう。わからない。

    「ちがう、ゾロはナミを追いかけて飛びこんでった」
    ウソップが、今までとは思えない流ちょうな口調で説明しきらない二人の言葉を繋いだ。
    「俺は見たよ。ゾロはナミが落ちたのを見て、側に転がってた浮き輪を抱えて飛び込んでったんだ」
    「ウソップ君・・・・しゃべってるの?」
    ロビン先生はぽかんとウソップの顔を凝視した。そしてすぐに眉を顰めて船内を見渡した。見えるのは子供が四人、居るはずの子供が二人足りない。
    言われたウソップははっと気がついたようだ。確かに自分は今ロビン相手に喋っている。今までにない澱みのなさで。

    「お、俺?・・・え??!は、話せてる!?」
    ウソップは呆然とした途端に少し戻ってきた。だが口から出る言葉は以前より明らかに流ちょうだ。
    「そのままでいいわ、事態を説明して」
    今度はしどろもどろに。突っ込まれる度にドキドキして舌は固まったら今度はサンジが助け船をくれた。






    「やっぱ航路の指示がずれてるな。灯りもぱぁ。何がどうなったのか順番に誰か説明できねぇか?」
    フランキーは大きな眼でぎょろっと睨み付けるが誰も口を開かない。
    少し仕組みの判るウソップだが今は言葉と心が混乱してまだ説明は出来ない。サンジとルフィは機械は判ってない。ビビは泣くばかりだ。でもとりあえずとルフィも含めて野郎3人顔を見合わせてはしどろもどろと経過を追って説明を始めた。


    「とにかく。雷にあったみたいで制御が利かなくなって。色々いじってしまって余計に判らなくなって最後は外のスイッチ盤にまで手を出した のね?」
    「何とも無意味に行動的なガキ共だな」
    ビビを抱えながら話を聞き出していたロビンも、後から船と船の固定をしてずぶ濡れになった雨具を脱いだフランキーも頭を抱えた。
    タオルで手を拭いて水滴が機械にかからないようにしてフランキーがパネルをぱちぱちいじり始める。船内の、船外のと一通り見て回ってすぐ戻ってきた。
    「ここも切ったか・・・・ああこれは無理だ。ほれ、これでどうだ?」

    船にスイッチが入り始めた。ブゥンと音がして電気が一斉に点いた。発動機にはブンブン作動している音がする。動き出した機械の音がする。
    何より明るくなった。
    「さ、サニーが・・い、生き返ったみたいだ」
    ウソップの呟きは皆同じ気持ちだった。

    「ちょっとまだ、いかれてるとこもあるな。まあお前らが触ったからと言うよりああーー受信用のとジャイロが!!おめぇら、いじったときに逆位相の負荷なんかこいつらに掛けたな!」
    いきなり怒り出したフランキーに3人は首を横に振った。
    知らない。そんな難しいこと言われたって俺たちに判るもんか。

    ロビン先生も画面を睨んでる。スイッチ類に手は出さないがかなり機械のことも飲み込んでいるみたいだ。
    「このまま移動は可能?」
    「明視下なら航行は何とかな。けどこの船だけじゃ地理も海図も把握が出来ねぇ。オールジャクソンの認識も出来てねぇみたいだからこのまま迷子になったらアウトだ」
    「そう。じゃぁ、このままじゃ捜索どころか帰れない?」
    「うーーん。人間で言えば脳のあるところ・・システムの基本がいかれてる。けどこれは乗ってきたオールジャクソン号とつないでそれから壊れたデータの入力だな。つくづくあいつに乗ってきて正解だったぜ」
    「かかる時間は?」
    「朝までにはなんとかしてやるよ。それで帰るんだ」
    低い音が響いてサニー号が止まった感触がした。




    フランキーがもう一度向こうの船から工具を持ち込んだ。一緒に向こうのデータも持ってきたらしい。
    外の雨風は止み始めている。風の音が気にならなくなってきた。雨足は早いようでここは降ってない。
    外の暗さと対称的に点灯して明るくなった船室だが空気は暗い。

    ルフィが大男のフランキーの前に立った。立って見上げると二人の差は倍くらい。体格がずば抜けて大きいフランキーの益々その偉容がくっきり映る。そのルフィをちらりと見ただけでフランキーは工具箱と小さなコンピューターを繋ぎ始めていた。
    「なあ。朝までこのままなのか?」
    「ああ。今は船を停止させた。エンジンはそのままだがな。もっとも早く治ったところで、夜に航行は無理だ」
    フランキーがボックスの蓋を開けてコードを取り出した。コンピューターに一部繋いでみる。
    「その後帰るのか?俺たち島には行けない?」
    「無理だな」

    ルフィは真っ直ぐフランキーを見上げていた。
    その視線の強さに作業中のフランキーはルフィの方を見た。
    「なぁ、フランキー、お前ナミとゾロ、助けにいかねぇの?」

    がちゃん!
    フランキーの手元でいじってるキーボードが落ちて、足下にあった工具がひっくり返った。画面は揺れたりしなかったが、手の中の道具を振り回して割れんばかりの勢いでフランキーは雷を落とした。

    「あのなぁ!ガキが勝手ばかりを抜かすな!!行かねぇんじゃねぇ!行けねぇんだ!船もダメだしあいつらが今どこで浮いてんのか沈んでんのか、それも判らないんだぞ!もし行ったとしてあいつらの真横を通り過ぎたって、今の俺たちじゃわからねぇ!もし死んじまってて浮いてるだけだったらもっとだ!手も振れねぇあいつらをこんな闇の中でどうやって見つける気だ!」

    「フランキー!だめよ!子供達の心の蓋をこじ開けないでっ!」
    フランキーの言葉にビビとウソップが喉を絞るような悲鳴を上げた。ロビンの制止よりも先に言葉は耳に届く。
    聞こえた耳が痛い。それは今まで誰もがわざと考えないようにしていたことだ。
    考えたくない。だから考えない。
    そうしないと自分たちが壊れてしまうから。
    まだ小さな心に大きすぎる負担がかからないように、本能が備えた逃げ道を誰が否定も責めもできるだろうか。


    二人が見えない。
    夜の闇の中では生死も判らない。
    みんなは助かるのに彼らは何処にいるかも判らない。



    ロビンは床にうずくまって震えるビビを抱えた。背中と頭とをそっと撫でる。そっとそっと。
    「彼ら、かなり泳げるって聞いてるわ。だからきっと、大丈夫。だから落ち着いて呼吸して」

    そう言われてもビビの呼吸は狂い始める。痛いのは耳じゃない。心が無音の悲鳴を上げる。ロビンの声も説得にはならない。

    「ビビ。深呼吸よ。じゃないとまた喘息が起こってしまう」
    「・・・・また?」
    ビビは聞きとがめた。何ですって?
    「私・・喘息じゃないわ」
    あっとロビンは小さい声を添えた手の中に隠したがビビには聞こえた。


    私が?
    だって病気の記憶も、病院に行った記憶も無いわ。


    じっと睨んで無言でロビンを問い詰める。少し視線を泳がせてそらしていたロビンはふぅとため息を吐いて話し始めた。

    「聞いてはいたけど本当に覚えてなかったのね。でも、貴方には間違いなく既往があるのよ」
    既往とは昔罹ったことのある病気のことだと苦い笑みを浮かべながらロビンは説明を加えた。
    「貴方の喘息の初めての発作は私と初めて会ったとき」
    「え?」
    「紹介されて私が声を掛けようとした途端ぜいぜい言い出してあっという間に呼吸ができなくなったの。初めてだからお父様も驚いたし横にしただけで真っ黒になるから 貴方が死んでしまうかと思うと何より恐かった」
    ロビンの両手は自分の二の腕をぎゅっと捕まえる。血が出るのではと思うほどぎゅっと。

    その姿を見てビビの中にぽんと何か記憶が浮かんでくる。今まで消えていた記憶だ。
    5歳の私は誰かに会って興奮してた。
    素敵な人だった。
    興奮した胸のドキドキが突然恐いことになった。身体がおかしくなって息もできなくて、世界がどす黒く閉ざされていく。

    その人との出会いは苦しくて辛い、嫌な記憶ばかりで埋め尽くされてしまっていた。

    「そう・・私、あの時、白いお花を持ってたのに」
    溢れた記憶に思わず口走る。そうだった。
    (水色と紫と仲良しの色のお花ってどれ?『ビビ様、お庭の花ならどれでも良いでしょう』じゃ!大好きなこれにする!)
    幼い私はあの日をとても楽しみにしていたのだ。



    「花・・?ごめんなさい私はちょっと覚えてないみたい」

    ロビン先生は眉を顰めた。・・本当に思い出せない。ロビンの記憶も真っ黒に塗りつぶされている。、真っ赤な頬が真っ黒になってゆく。そのまま救急車の音。闇で見つけたと思った光が一気に塗りつぶされた。

    「だってさっきまでピンクの頬の可愛い子がいきなり『いや』といったっきり苦しげにもがいてたの。
     その後原因を調べても判らない。結局は『重度の心因性による喘息だ』と。
     急な緊張といえば私のことだったろうしということで貴方と隔離されることになり私は本国に一度引き揚げた」
    少し寂しげな笑顔がロビンの口元に浮かんでいる。
    辛かったのはビビだけではなかった。たった一人で海を越えてきたロビンにも辛い思いをさせたのだ。一人だったのに、更に家族と引き離して一人で暮らさせた。私のせいで。


    同時にビビの中に苦しい記憶も戻ってきた。

    胸が苦しい。息が吐き出せない。身体の中から嫌な膨らみが押し出せない。
    ああ、苦しい。
    「お嬢ちゃん?」
    「ビビ?苦しいの?」
    はっと気遣うロビンにゆるゆると顔を横に振った。

    ああ、この顔知ってる。昔に一度だけ見た。
    その時もこんなに苦しかった。
    この人を思い出す毎に感じた息苦しさと恐怖はこれと同じものだ。
    「あの時と・・・一緒・・・」

    その時起こった身体の苦しさをこの人の記憶と重ねてしまった?
    だからロビン先生を見る度思う度に私は苦しかった?
    そんなの・・一番辛い覚え方だ。

    涙が溢れてくる。
    恐い記憶が襲ってくる。
    助けて。恐いよ・・・。


    ロビンがいきなりビビの胸に自分の耳を寄せた。前も背中も何カ所かを押しつけてから自分のウェストバックから吸入器を取り出した。
    「これをゆっくり吸い込んで」
    肩を支えて姿勢を取らせる。ビビは言われたままに吸入器を吸い込んだ。
    「深く。しっかりとよ」
    そのまま抱えていてくれる。辛いから体は横になりたいのに、なると苦しいから抱きかかえられたままにする。
    「ゆっくりよ、これは気管を広げるから、大丈夫」

    ああまだ苦しいけど抱えられてるからだが温かいのを感じる。
    うん、と頷く。
    目の前の真剣な顔。うんくらくらしてくるけど少しずつマシになる。

    「大丈夫?」
    今度は本当に頷いた。
    「貴方用に持っていたのがやっと役に立った。けど本当は必要のないものだったはずなのにね」
    ビビの額の髪を揃えながらロビンがうなだれた。

    「ごめんなさい。その後治療は催眠療法が効いたと聞いてるわ。なのに、今、私が漏らして思い出させてしまったなんて」

    ロビンの手は下から背中をゆっくりなで上げる。そのたびに少しずつ痰があがってくる。苦しい咳が出るけど、出す毎に何か違う物が吐き出されてくる。

    「いいえ」
    ビビは首を横に振った。
    「違うわ。苦しかったのは違う。・・これじゃないの。 全てを思い出せなくて。だから私は苦しかった」

    何故なのだろう?どんどん後から後から涙が溢れてくる。鼻の奥まで流れ込んで余計に咳が絡んでくる。
    ただ咳き込む度に撫でられる手が何より何より温かい。
    まだおかしい、でも少しずつ呼吸が落ち着いてきた。
    ほっとしたロビンも泣いている。
    二人で泣いている。







    「ビビィ!お前やっぱり美人だな!」
    「え?」
    真横でルフィがいきなり呟いたので驚いた。
    咳で顔は真っ赤だし、涙が頬に絡んで鼻もズルズル言ってる。きっと鼻の頭も真っ赤に違いない。絡んだ痰で喉もゴロゴロ言ってるし胸の音もまだ少しひゅうひゅう言ってる。どっちかというと絶対に他人には見られたくない顔だ。
    なのにいきなりの相手にいきなりの文言に、涙でぐちゃぐちゃになったビビは耳まで染まる。
    サンジが嫌そうな顔で怒った。

    「くぉらルフィ!先生の目の前でいきなりビビちゃんくどいてんじゃねー!」
    「なんでだ?だってこいつ今一番良い顔してっじゃん」
    そこまで屈託無く言われると照れて良いやら面はゆいやらが交錯してもっと真っ赤になる。それに次の言葉が出ない。
    ロビンは濡れた頬で、それでもくすくす笑ってる。




    その時ロビンの胸ポケットに蛍光色の点滅が見えた。




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