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    蜜柑狩 '13ナミ誕
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    空と海の狭間で-30

    2007ナミ誕 空と海の狭間で ] 2007/08/31(金)
    「そっちだそっち」
    薄暗い木々の中。人も通らねば消えてしまう道のはずが草の中に風化した石畳のような敷石が続いてる。たまに曲がり、別れ、交差し、まるで訪れた人を迷わせるような感がある。
    「んでそこを曲がるっと」
    「なんだよルフィ?来たことあるのか?」
    「来たよりすげぇよ。俺、シャンクスに何度も道聞いたから」
    ルフィは得意げに鼻の下をこすった。
    「何度も何度も。病院のベッドで地図を書いて夢に見てた」
    「だからこの先何があるんだ?」
    「ししし……みてろって!」


    皆が息をのんだ。
    島の中心からぐるりと回って東の方。日の昇る方角を望む。そこは洞になっていた。
    ナミとゾロが先に来ていてもおそらくは入り口はとても気がつかなかった。そんな隠れた東の海に近い洞。
    ルフィの用件はそこにあるという。

    ロビンもフランキーもみんなを後ろに連れてルフィは足をすすめる。
    ゾロに近い迷子認定のルフィだが絶対的に確信を持った足取りだ。
    道は洞の中に入ってすぐに大きく曲がった。
    「おいおい本格的に真っ暗じゃねぇのよ。待ってな」
    いきなり真っ暗になって慌ててフランキーが手持ちの大きなライターで火を点けてくれた。声を掛けられててもナミは一瞬真っ暗なところに点いた明かりに身体がこわばった。ゾロはナミをちらりと見るとすっと動いた。ゾロの陰がふわっとナミにかかり、炎は遮られる。その影からならば怖くはなくなった。ふぅっとため息をついたナミに目をやるとナミは少し、ゾロにだけ判る僅かさで、微笑みを返した。

    明るくなって進み、広い空間に付くと皆の視線は一点に集まった。揃って真正面を見る。

    「ここ?」
    「がらくた置き場か?」
    「にしちゃぁ・・?」
    変なものだらけだ。大きな棚に大きな箱が二つ。その周囲には色々な物が置かれている。二つの編み上げられた箱なので中の通気性は良いと思われる南国の箱。駆け寄ったルフィが少し乱暴に開けようとする。埃をかぶったそれはあわてて脇に来たサンジとゾロに手伝ってもらってゆっくりと開けられた。

    「これは?」
    周囲のものと変わらないガラクタばかり。はっきり言えば医療廃棄物のように思える。
    外には大きめの物、例えば車椅子だったりギプスだったり。中には使い方の良く判らないプラスチック製品の管のような物もある。杖。使い古したそれらの一部にはもう掠れて見えないが何か書いてある。封筒が付いている物もある。放置されてと言うよりは大切にしまわれて何十年も経た宝箱のように見えないこともない。
    そしてもう一つの箱はよく見るともう少し小さかった。

    ナミはそっと箱に近寄って中味を手に取った。
    小さなプラスティックの?吸入器?
    「なんか書いてある?ありが・・と・・?まるで手紙ね?」
    「名前みたいな物もあるわ」
    ビビが大きな杖を手に取った。杖に巻きつけられたように紙がついていた。文面が少し読める。
    ロビンも手にとって見る。小さな医療機器を手に取った。そこには小さい字で書き込んであった。


    やっとラフテルに来れたよ!ずいぶん長く使い込んだね

    長い間ありがとう。君が僕を助けてくれた。

    別れるのが寂しいなんて変な気分。けど私、ちゃんと一人で歩いてみせるから。



    「ここは・・・・?」
    ロビンがまさかという顔をしてフランキーを振り返った。
    「そうさ、ここがこのキャンプの最終目的地だ。『約束の』とか『幻の』と言われるラフテル。当然スタッフでも知らねぇモンも一杯いる」

    フランキーもそこに来たのは初めてだったようだ興味の赴くままに視線を上下左右に飛ばしていた。それでも急に解説を始めた彼にルフィを除いた他の皆の視線が集まる。

    「ここは・・この島はロジャー個人の持ち物でな。病気に、つまり自分に勝てた者だけが来ることを許されるキャンプの聖地ってぇ決まり事だ。まず患者の一人一人に資格があるのかを試される。必ず治って返しに来る約束を交わさせる。
    そりゃぁもちろん全員が来られる訳じゃねぇ。治療の途中で来られなくなる奴も一杯いた。逆に治療を終えても来る必要がない者もいる。だがここに来ると誓って、ここに立って、次の時代を歩いてゆくと心に決めたもんのための次の世界へ旅立つ奴の決別の約束の場所、ここはそんな所だ。

    治療が終わってくる奴もいればまだ闘病中でもここに来る者もいる。その資格があるのかを沢山の医師が、スタッフが見て選んでこのキャンプに送り出す。だから毎年のキャンプごとに必ず行き先にあがるのに、ほとんど実行されない。『幻の』と言われる所以なんだ」


    目の前の箱はたどり着いた者の戦いの墓碑だ。
    命とともに病とすり切れるまで共に戦ったモノ達の、その証だ。


    ルフィがもう一つの箱の前に何もいわずにじっと立った。
    これはそっと。ルフィの手がその箱を優しく開ける。
    ここには同じ形の帽子がいくつか入ってた。
    葉か枯れて、崩れてしまった物もあるが皆同じ形だったことは判る。

    ルフィのと、同じ帽子だ。

    「ここの島は熱帯に近い。植生が違えばここでしか手に入らない植物がある。その葉を使って作られたのが 『誓いの帽子』 ってな訳よ。これがその約束の証になる」
    フランキーがルフィの頭にある帽子を指さした。端はすり切れてただの麦わら帽に見えていたその帽子がフランキーの持った灯りを映して光って見えた。
    「ま、俺でもこいつので本物は初めて見たけどな。此の島も誓いの帽子そのものも。実はかなり秘密の事だ。なんでかって聞いたところによると気遣い説と面白れぇからとやった説の二つがある。本当のところはロジャー以外誰も知らねぇんだ」

    「グランドラインってかなり古い企画よね?それにしたら・・」
    ロビンが尋ねる。置かれた帽子の数は決して多いとは言えなかった。しかしどれもがすり切れていても大切にされたことが判る。

    「んなこたーぁどうでもいい」
    ルフィが真剣な顔をして、自分の帽子を頭から外した。
    「他の奴らがどうしたとか、何番目とか、んなことどうでも良いんだ。俺は・・俺の約束をシャンクスと果たしに来ただけだ」
    静かな、今までの奴の奇行からは想像も付かないような静かな声だった。
    「去年の・・最後の点滴が終わったときに夢の中でここをはっきり見た。それで判った。この治療をやり抜くことが俺の宝に繋がるって。シャンクスが言ってた宝ってのは物じゃなくって俺自身になるって」

    ルフィは凛と胸を張った。
    「来たぞ。シャンクス。  そして俺はここから先に行く。いつかお前だって追い越してやる」

    じっと、ルフィは置かれた帽子達を見ていた。そのままゆっくりと数歩歩く。自分の帽子を手に取ると小さくたたんだ。同じ形に畳まれたそれをそっと箱の中に重ねて置いてしばし、ルフィは手を離さず動かなかった。

    「シャンクスが・・?」
    静かに黙っていたロビン先生の瞳から大きな粒が二筋三筋と流れ落ちていた。
    彼が、この結末を自分に見せたかったのだと今は判る。
    何度も彼は言っていた

    『入院する子は弱いって?病院が、弱い奴が集まる場所だなんて誰にも言わせたくねぇよ。常に敵を抱えてる、けど諦めない。そんなちっこい戦士の集まる場所なんだ』

    この目の前の小さな戦士は戦った。そして必ず未来へ羽ばたいてゆく。


    かつての自分の患者達も沢山心を込めてつきあったつもりだ。だが、彼らの病状が改善した場合、多くは黙って自分の目の前から消えゆく。彼らの訪れが絶えたことで本復を想像するしか許されない。もしかしたらドロップアウトしたままなのかという思いも捨てきれず、いつも置いてきぼりにされるのが医療側だ。
    自分がそれを諦めていたのをシャンクスに見透かされていたのかとロビンの目はもっと熱くなる。
    自分がその反応と手応えをどれくらい欲しがっていたことも。
    研究よりも臨床を。人の手と人の手をつなぐ医療をやりたかった。
    小さなビビと手を取り合うことの他に、ロビンが望んでいたものをシャンクスはロビンよりも判っていた。
    自分と共にいてもロビンの家族への渇望を満たせないと知った彼は私の元を黙って去った。だがシャンクスは別れに際してこんな素敵な機会を彼女に残していってくれたのだ。

    そんなロビンの涙にフランキーはどうやら少し慌てていた。小刻みにきょろきょろしたあげく覗き込んで泣いているロビンの口元の微笑みを見て頭をひねった。
    「アンタがあいつとどれだけの仲かしらねぇが・・知ってるか?シャンクスはロジャーに直接帽子を貰った、一番最期の奴だ」
    「そう」
    ロビンはそう一言だけ言って更に微笑んだ。






    もう一人。
    口をきかない男が居た。

    彼もこの島に約束を果たしに来た。
    祖母の言葉の約束を果たしにこの島に来たはずだった。
    だが島にいてもそれという答えが見つからない。
    慌てないのは落ち着きと言うより自己に対する逃避に過ぎなかった。
    だが判った。祖母の真剣な教えはこの、自分のポケットの中にある。

    -------くいな-----------
    姉の笑顔が急に心を占めた。

    くいなは心臓の病持ちだった。詳細は判らないが入院も繰り返していて、幼かったゾロは姉がもっと健康になりたいと何度も泣くのを見ていた。
    だがある日突然彼女は泣かなくなった。

    今なら判る、彼女はきっとこの帽子を手に入れたのだ。彼女も病と闘う戦士としてその心根を認められていたのだ。
    『ゾロ?また院内で迷子になるよ?』
    からかうように笑う彼女の病床に厚い参考書が並ぶようになった。

    医師志望を心に決めた姉は心臓の発作で病院に向かう途中の交通事故でなくなった。運転していた父母と同時に、三人の命はあっという間に失われた。
    車体は炎上して全て焼けてしまっていたと聞いている。その直前、家から出るときに彼女は苦しそうにしながらゾロに入院のセットの中にあるはずの忘れ物を取りに行かせた。それは小さな袋に入ってた。
    『ゾロ、ありがと。チョッパーの面倒頼むわよ』
    それが最後の言葉で・・祖母が抱いていたチョッパーはほんの乳児だった。



    ゾロは思わず自分のポケットから祖母に持たされていた小さな錦で織られたお守り袋を取り出し、開けてみた。
    「これか・・・」
    焼けこげた、だが葉のようだ。
    つまんで取り出したところで崩れ始める。思わず反対の手で受けるようにすくった。
    事故現場に残された、その破片だとは聞いていた。

    「姉貴・・。俺がここに来るので正解だったのか?」
    今、彼女の面影が鮮やかに心に映る。
    たおやかな容貌と裏腹の気の強さ。発作もなく元気なときは何度でもちいさなゾロを打ち据えるのに容赦など無かった。
    気が強いように見せて……実はいつも不安だらけなのに人には見せなかった。
    ゾロは感慨深げにその箱の中を凝視する。
    ナミがそっと脇に寄り添った。
    「あんたも持ってたの?」
    「いや、姉貴のだ。生憎自分で返す前に本人は死んじまったんでな」

    聞いたナミの顔が少しこわばった。
    「ごめん」
    「きにすんな」
    自分が思っているより優しい声が出ていた。
    「ほんとに、気にしなくていい」
    その姉の面影が微妙に歪んでゆく・・・・そしてその影は隣の少女の姿に重なった。
    昨夜自分の横で意識が無く、だが本来生気に溢れて話に驚き喚き、そして覚悟を見せる少女の姿・・姉も生きていたならこんな女だったかもしれない。


    「俺もここに来なきゃいけなかった」
    沢山のものに出会うために。
    「良かったなぁゾロ!俺のお陰だぞ!」
    ルフィはゾロの背中をばしばし叩いてニシシと笑う。
    「ああ。本当にそう思うぜ」



    「俺も。ちょっと違うけど」
    ウソップは自分の小鳥をそこに置いた。船に乗るからとお守りのつもりで持ってきたのはただの偶然だ。
    だが。自分の遠い道のりは静かに戦った跡なのだと教えてもらった。
    一緒にいてくれたのはここで初めて会えた友達だ。
    彼らに会えて本当に良かった。
    聞いてくれる彼らには言葉よりも心ががなめらかに伝わった。
    いつものように苦労して思いは溢れる前に零れないようにしなくて良かった。溢れたら溢れるままに。何を口にしてもこいつらは自分のことを等身大に見てくれる。それが判ったから。
    「俺、もっと、人と、は・・話したい」
    言葉をゆっくり選ぶ。思いはゆっくりと確実に伝わる。
    一朝一夕に言葉が治るとは思わない。だがおそらくは自分は、いつかこれを乗り越えられる。

    「それは、素敵ね」
    「そうね、素敵ね」

    ビビとロビンが二人揃って答えた
    互いに重なった声は共鳴していた。驚いて二人は少し顔を赤らめ、少しだけ視線を外しながら、それでも相手をゆっくりと見たいと思った。
    向かい合った2人はそれでもついうつむきがちになる。

    ええいっ
    ビビは面を上げた。

    「お姉さん」


    ロビンの顔が驚きと興奮の色で染め上げられる。
    この一言を言うのにどれだけの時間と自分の中の勇気とそしてとてつもない時間が要ったろう。
    「一緒に帰りましょう。あたし達の家へ」

    まだ力みすぎて少し震えたビビの声にロビンはやや遅れてにっこりと微笑み返した。
    二人が過ごしてきたこの遠回りはとっても大切な道だったと互いに思っている事が分かり合える。
    つないだ手はまだ指が絡むだけ。でもこれからこの手よりももっと大切な絆を紡いでゆけるだろう。




    「うっうっ・・おめぇらって・・おめぇらって・・なんて良い奴ばっかなんだ!うお~~ん!」

    いきなりフランキーがサングラスを外して泣き出した。溢れる涙はどうやらずっと彼らが帽子と向き合う間だけは遠慮していたらしい。下まつげも鼻水もぐちょぐちょの顔で泣き続ける。まぁまぁとサンジがフランキーの腰の辺りをぽんぽんとあやすように叩いて笑っていた。
    「おっさん泣き虫だな」
    「おめぇもな!良かったなーーうおー~~~~ん!!」
    その言葉にサンジは両頬を軽く染めた。
    「ちぇっ」
    叩いていた手が軽い拳に変わる。






    一人一人が部屋を出て行く中、最後までたった一人。黙祷と言えるくらいの時間と静けさ。最後までルフィが動かなかった。

    「もう、いけるか?」
    皆が出て行った中、ゾロが振り向いて声をかける。
    「ああ。いこう」
    光の中へ。










    青い空の下、小さな桟橋の向こうにサニー号だけが残っていた。オールジャクソン号は先に返された。報告を兼ねて先に修理の準備をしておくと言ってザンバイが笑って帰っていった。

    全員がサニーに乗り込み点呼して確認する。フランキーが船長として舵を取り始める。船は静かに岸を離れた。
    船を送る風は柔らかい。昨日の雨で流された空気はすっかり洗われていっそ清々しい。この天気ならもう自動航行で問題ない。無事帰ることが出来るだろう。

    「さあて、帰るぞ。けどな。その前に全員そこへなおれ!」
    フランキーが甲板でいきなり鬼の形相になった。その変化に驚いて皆何も言えずに揃って並んで、立った。

    「本来気候の関係もあったから今朝早くに出航予定でお前らを連れてくるはずだったってぇのにちゃんと人の話を聞いてねぇから!!・・・・・・と言うことで脱走の罰はお尻百叩きだ。全員で分割してやるから一人十回ずつで許してやる。お嬢ちゃん達は、ロビン先生!頼むぜ!」
    「ええ、任せて」
    二人が拳の関節をぽきぽきと鳴らし始める。今までにない本気が漂っている。特にフランキーは身体も大きい分手もとてつもなく大きい。
    ロビンもニコリと涼しい笑顔なのに嬉しそうだ。
    「さぁ全員ズボンをおろしてケツを出せ!!!!!!!」

    「えええええ~~~~~~~~!!!!!!!」


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