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    蜜柑狩 '13ナミ誕
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    「Othello」1/3 (チョパとナミ)

    2008ナミ誕 ] 2008/07/03(木)
    「なんで俺がてめぇの飲む酒の用意しなきゃなんねぇんだ?」
    「サンジ君はあっちの船に乗り込んじゃった。それに『ちょっと暑くなってきたな』っていったのはアンタ。」
    「その後こういう日にはビールが美味いって言ったのてめぇだろうが。」
    額に皺を寄せたゾロが更に凶悪な目つきでジリジリとナミに詰め寄って、この天気とは裏腹に涼しい顔をしたナミがあっさりあしらっている。
    解放されて、軽い打撲傷をチョッパーに手当てされたはっちゃんとケイミーは手伝いでタコ焼船に戻っていたし、サンジはタコ焼と人魚に釣られてルフィ達と飛んでいってしまった。残っているのは飲むメンツばかり。

    「そうよー。力仕事はあんたの担当。樽で持ってくれば訓練にもなるしアタシも飲める。良いじゃない。」
    「俺がか?!」
    ギャラリーの少ない中まだ二人の痴話喧嘩のような絡み合いは続いてる。今度はナミの顔に凶悪な光がにやりと浮かんだ。
    「はっはーーん、判ったわ。あんた酒樽の位置がわかんないのね?それともこのサニーの中で迷うのかしらぁ?」
    ゾロが未だに予定外の所には足を踏み入れないこともナミは重々承知のうえだ。
    「・・ばっ・・ばかも休み休み言え!なんで俺が・・!」
    頬を染めて今までとは打って変わったゾロのやや後ろ向きな言葉にナミはたたみかける。
    「じゃ、いいでしょ? あら?フランキーは何処行くの?」
    フランキーの顔が少し歪んで微笑んでいる。どうやら笑いを堪えながら助け船のようだ。
    「どうせ俺様もコーラ取ってくるからよ。一緒に行こうぜ。」
    いつもの事ながらナミにやり込められて上下に揺れるゾロの肩にフランキーはポンと手を置いた。
    「あら、良かったわねー。」
    見送りに手を振りながらにやにや笑うナミの横でロビンも笑いを堪えるのに必死な様子だ。まだブツクサ言っているらしいゾロを慰めるようにフランキーが背中も叩いて立つように促した。ちっと舌打ちしながらゾロもその助け船に乗り、振り向きながら船内に向かう。笑いながら歩いて、太いフランキーの腕がどんどんガシガシゾロの背中を叩いたらしく、最初は黙っていたゾロがいいかげんにしやがれ!と噛みついてもフランキーは笑ってる。
    クスクスとロビンも笑ってる。
    この二人の大きめの男が乗ってもサニーにはまだまだ余力がある。フランキーみたいに良い船だ。船の上に渡る風も気持ちよい。
    さて、こんな良い船で今は平和。美味しい料理の登場を待ってる。
    「ねぇロビン、『これ』・・しない?」
    ナミの手元にはボードゲームの盤があった。薄い白黒の石を裏表に合わせた牌を交互に盤の上に配置する。相手の石を挟めば自分の色に変えることが出来る。最近ロビンに教わったこのシンプル過ぎるゲームが今のナミにはお気に入りだ。
    「いいわ」
    カランとコマを盤に乗せる音が甲板に響く。向こうの船の喧噪の中、乾いた軽い音が風に響いた。

    向こうの船の喧噪はいつもののどかさでブルックが違和感なく融け込んでいるのも微笑ましい。タコ焼の下準備と、サンジはその始まりからずっと興味を引かれているらしい。

    ゾロとフランキーと入れ替わるようにハチの手当てを自慢の診療室ですませて送り出し、道具を片付けたチョッパーが満足げに出てきてその脇を通る。
    甲板に流れ出した匂いにその鋭敏な嗅覚を刺激されたかチョッパーの鼻がぴかぴかに青く光ってる。目的の船に大きく手を振ってさてと走り出そうとしたチョッパーの耳にパチンと言う音が響いてその足を止めた。自分のコマをもてあそぶナミの姿に目を止めた。

    このゲームなら最近チョッパーも少しロビンに手ほどきを受けたからルールは判る。師匠役のロビンが打った手を受けるようにナミが返す。それをあっさりとロビンが覆して彼女の色に盤を染めてゆく。まだ始まったばかりとはいえ早速盤の色は黒。一方的にロビンが優勢だ。


    ゲームに興じているのは二人だけでここに立ってるチョッパー以外他には誰もいない。
    ふと、これを聞くなら今しかないと本能的な思いが沸きあがってチョッパーはナミの横に立った。
    ゴクンと唾を飲む。
    「なぁ、ナミ?」
    「ん?なぁに?チョッパー?」
    「・・・一応聞いておこうかと思って。」
    「なぁによ?」
    ナミは盤上から目を話さずチョッパーのやや重い問いに気付かない。

    「あのさ、ナミの、ハチとの・・魚人との因縁ってオレが聞いても良いか?」
    深く吸い込んだ呼吸でちょっと早口にチョッパーは一気に言葉にした。

    ナミは動かない。
    チョッパーも動けない。
    反対に心拍はぐんぐん上昇を続ける。

    「い・・いやっ・・そのっ聞いたらいけないんなら聞かないゾ!」
    チョッパーは首をぶるぶる振りながらも視線はナミから離さなかった。ナミはちらりと首を回した。
    「けど・・あいつ・・治療中にルフィやゾロの昔話はしてくれたけどナミのことになると言葉濁すし・・もの凄く申し訳ながっておびえた目をするんだ。、その・・あいつ良い奴だと俺は思うし・・・」
    ナミは大きな瞳で一度だけじっとチョッパーを見つめ、そのまま視線を元に戻した。

    黙ってまた盤面に向かう。
    盤面だけをきちっとみながらそのままの姿勢でパチンとナミが一手打った。
    その向かい側でロビンも動かなかった。
    二人が見ているのは盤面だけ。その盤面は更に、真っ黒い。
    合間を開けずにパチンとロビンが返した。

    「そうきたか。」
    ナミのリラックスした口調にロビンは先程からのほんの少し胸の中にいたわだかまりを口にしてみた。
    「いいの?因縁のあった相手なんでしょ?」
    ナミの動きが止まった。
    「他ならぬアンタには判って貰えると思ってたけど?」
    ロビンは少し首を傾けて微笑んだ。
    「私には判るようには思うけど。でも貴方の気持ちは貴方だけのものよ?彼は困ってるみたいに見えるし。」
    「ってな訳じゃないけど・・・けど俺が気がつかないでナミが嫌な想いをすることを口にするのは、俺が嫌だなって思ったから。」
    しどろもどろと、しかし語尾は力を含んでくる。


    二人の間では手元のゲームが中盤に進んだ。ようやく火が入ったらしく良い香りが風に乗ってきた。
    「・・いい匂いがしてきたわ。ゲームが終わったら食べられそうね。」
    ナミは指に挟んだ牌を口元に寄せて盤面を見ながら口にした。その指はリズミカルに揺れて牌を追う目は何手か先を読んで戻ってゲームに集中しているようだ


    このままナミが動かないのならば立ち去るべきか。チョッパーはそう思った。
    そしてこのことはすっかり忘れる。それが仲間に対する礼儀というものだし、男の取るべき態度だ。
    この船の男達はそう言う点で非常に誇り高い。何を教わらなくてもチョッパーにもそれは染みこんでいる。

    「じゃ・・」
    「聞きたいの?けど全然たいしたことない話よ。
     えーーっとね、あいつらにねーアタシの親代わりの人を殺されたの。島の人も何人もね。んでアタシはそのまま支配された村の為に8年奴らの下で騙されてただ働きさせられてた。そこへあいつらが乗り込んできてハチの仲間をぶっ飛ばしたってこと。終わった話よ。」
    パチン。またナミの白いコマの手は大きく響く。

    盤は半分以上埋まって、その盤面のほとんどが黒い。だがナミは冷静だ。
    言葉の殺伐としたイメージとはかけ離れてその態度は眼前の只のゲームの域を超えない。口にされた言葉が伝えるイメージとその口調には天と地ほどの解離がある。

    だがチョッパーの方がその言葉に引いた。
    あのハチが・・殺した?

    「あわ・・あ・・おれ・・」
    聞いてはいけなかったのではないだろうか?


    ようやくナミはチョッパーを見上げて振り返った。
    と同時ににっこりと微笑んだ。静かに、本当に普通に微笑んで軽く手を振った。
    「けど本当に終わった話なのよ。だからアンタが気にすることないわ。」

    「ナ、終わったって言ったって・・・。」
    ちょっとそこまでとは思ってなかった。
    どう言葉を繋いだら良いんだろう?ナミをどうやったらこんな過去から守ってあげられるんだろう?



    ふうっとナミは溜息をついて肩をすくめる。視線をタコ焼船とは反対の海原に漂わせる。次の一手に迷っているのか手に持っていた牌をもて遊ぶ指先も虚無感を否定しない。何も言えないままもっと続くかと思っていた沈黙はナミの自嘲の重みを含んだ声に打ち破られた。

    「ねぇチョッパー。被害者とか、身内を殺されたみたいな不幸にあった女の子はいつまでも笑っちゃいけないの?それって変だと思わない?」

    軽やかな声。その裏に響く重い問い。



    言葉が出なかった。
    その言葉をチョッパーは肯定も否定も出来なかった。己の身に引き替えて、只想いを馳せるのみ。
    ドクターの亡骸。乾いた涙。
    ドクトリーヌは共感してはくれなかったが、同情もされたことはない。

    だがナミは変わらず笑っていた。

    ナミは本当にチョッパーの答えを待っているわけではないようだ。
    「親を殺された可愛そうな少女が笑おうもんなら『なんで笑えるんだ?』って聞く人って絶対にいるのよね。」
    笑みに精度が増してナミはコマを左の手に取った。

    「けどね。怨みが一瞬で昇華される事って、本当にあるのよ。」


    「ほら、こんな風に。」


    細いナミの指がそっと指先のコマを盤に乗せた。パチン、と乾いた音がして白いコマが置かれる。次々とナミは黒のコマをひっくり返し始めた。そのコマの周囲の色が次々と変わっていく。
    盤面のを埋めていたあらかたの黒がその一手でひっくり返って一気に白くなる。


    「ほらこんな快感。アンタも覚えがあるでしょ?」

    夜桜がチョッパーの眼の裏に甦った。
    横のロビンは息をのんでいた。形勢のいきなりの逆転と同時に一瞬、遠い目付きをした。
    きっとロビンはロビンで海の上で燃えさかる煙にまみれた沢山の船を思い描いたとチョッパーは確信した。

    「あいつらが過去も怨みも一所にぶっ飛ばしてくれて私の世界もいきなり色を変えたわ。島に戻った笑顔と墓の前に置いて来ちゃった。けど、失せた面に黒は残ってる。消える訳じゃない、けど居なくなるのよ。気持ちや心もこんなじゃないかな?消えないけど考えないことも出来る。アタシにはその力がある。」

    ナミの笑顔は眩しかった。
    嘘とか虚勢じゃない本物だ。

    「怨みってのは勝てない相手に持つもんだと思うのよね。今のアタシ、このゲームと同じよ。あいつらに負ける所なんて一つもないし。」
    「あら、次は私が勝たせて貰うわよ。」
    「どうぞ~返り討ちにしてあげるv」
    そのまま盤面には笑顔と美味しそうな香りが混ざりつつある。

    判る・・・ような気はする。
    まだ判らないようにも思う。
    ただ、今のナミの笑顔が綺麗だから、それ以上はオレの言う事じゃないとチョッパーは判った。

    「ほら、焼き上がったみたいよ。」
    ロビンの言葉がチョッパーの背中を押した。
    「おう、行ってくるぞ!」
    「アタシももう一勝負したらそっちで食べるわ。」


    船の中から出てきたゾロとフランキーがちらりと見えた。
    躊躇いのない軽やかな声にも送り出されてチョッパーの足取りも軽くなった。



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