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    蜜柑狩 '13ナミ誕
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    ☆さつきまつ (ペローナとゾロ)

    2010ナミ誕 ] 2010/06/19(土)
    今でも黄金の実の香りを嗅げばあの表情が蘇る。
    鮮やかに。





    「お前!聞いてないのか!」

    目的がどこなのかもさっぱりわからないくせにずんずん先に進む緑頭の男がが足を止めた。やや遅れてのっそりと後方頭上を振り返る。
    「・・・・ああ?なんか言ったか?」
    城内をきょろきょろ見渡し意識が他に向いているやや胡乱な眼。彼女の言葉など聞いてないことはそれを目にした万人がわかる。
    「いい加減にしろ!あたしは何度も同じことを言ってる!てめぇには耳はねぇのか!」
    「ここにあるだろ」
    そっちこそ見えてねぇのか?とゾロは自分の耳を指している。その態度がより一層癪に障ったらしい。空中に浮かんで透け空けの女の子が一旦渋面を凄ませたが、あきらめたようにふくれっ面に舌を出してふわふわともっと上空に飛んでいった。白黒の傘がドレスと同じようにふわりふわりと浮いている。



    二人とも他者によってここにつれてこられた。島の名前も国の名前も知らない。飛ばされ、娘は環境だけは希望通りだった。ただ召使いもおらず思い通りにならない生活環境は話にならなかったが、どうしたのか食事はなぜか用意されている。ペローナはそのまま食べた。次の日も次の日も。誰もいるように見えなかったが食事だけは不自由しなかった。疑問にも思わなかった。
    数日して空から同じように男が降ってきた。男は望んではいなかった。だが命の危機だった。
    相手の顔だけは知っていた娘は最大級の気まぐれを起こした。


    「そっから城の外、なんか見えるか?」
    半死半生だった男を敵とわかっていても介抱したのはやはり同じく一人で寂しかったからだ。ホロホロの敵じゃないことくらいわかっていたし言うことを聞かせるのもたやすいと思っていた。だがふたを開ければこうも言うことを聞かない朴念仁とは想像できなかった。
    起きるやいなや出てゆこうとする男を脅して引き留めたのは部下がほしかったから。なのに全くを聞かない。彼女の方が怒るのも飽きてしまった。
    「あたしはおまえの偵察じゃない」
    「他に城の中は?」
    男は表情も変えずに言葉を続ける。いっそいらっとした表情だけでも彼女に見せれば勝った気分にもなれて溜飲も下がろう物をこの剣士には相手にすらされていないような気分ばかりにされる。余計にイライラする。
    「あのな、外にでるのは嫌だ、歩くのなんて絶対嫌だっつたのお前だろうが。」
    「うるさい!」
    「言っとくがオレは早く戻りてぇんだ。お前には借りがあるからつきあってここにまだいるが。」
    ゾロは答えないペローナに向かって仕方がないと言った気配だけを出しながら腕を組んだ。

    ペローナはぷいっとそっぽを向いた。帰りたがっている男が自分にではなく環境にイライラする理由はわかる。だからといって当てもなくこの館を出てもどうなるかわからない。一緒に放浪するつもりはないしこの城がどこにあるのかどころかこの周囲すらもよく知らない。今までなら部下のゾンビ達に偵察や情報収集を全部やらせてきたのだ。
    ならばゾロに勝手に行かせればよいのだが何となくそれも嫌だった。手詰まりのままイライラしている。
    ゾロが言うことを聞かないのが悪い、と文句ばかりが出る。



    今日ゾロは館の中を歩きまわり始めた。ココアが欲しいとペローナも付いて来たのがこの態だ。
    「飯作ってる奴らはどこで寝てるんだろうな?」
    ゾロは歩きながら独り言のようにつぶやいている。
    「なんだって?」
    「おい?あれはなんだ?」
    会話にはなっていなかったが指さした先は館の後ろ。そこに小さな建物があった。
    「しらないな」
    「飯もなんか居る気配もそうだが城の中のことも知らねぇのか。」
    ゾロのあきれた声にペローナはカチンと来た。だが建物には興味がそそられた。霧の中、ガラスで覆われた白い骨組みが見える。ほのかに浮かび上がって明るい。この霧の晴れない城の周りでは珍しい明るさだ。

    それは小さなとても小さな温室だった。




    まるでそこだけ光を集めて作ったような温室だった。中はほの暖かく、地にも上にも緑。奥に野菜が少しと手前には何本かの木が植えられている。中身は昨日の食材と同じだ。空気は管理されているらしく暖かく柔らかい。ペローナにはやや苦手な空気でもある。もっとじめじめした外の空気の方が好きだがいきなり現れたこの空間の緑の中にいきなり浮かぶ花の色は綺麗だった。
    ペローナは一歩足を進める。
    「いいにおいだな。ここにだれかいるってのか?」
    返事はなかった。
    「誰もいないじゃないか」
    そう後ろに声を掛けたつもりがそちらにも居るはずの男は居なかった。もっと奥に勝手に入っている。目標を見つけたように真っ直ぐに。ただ黙って一番奥の一本の木にゆっくりと歩み寄っていた。
    それは濃い緑の葉に橙色の実が付いている。僅かしかないこの島の中でも陽の光をふんだんに浴びるように配置された大切にされているやや小振りな一本。実は鮮やかな蜜柑色をしていた。
    「なんだそれ?」
    ゾロの答えはない。ただ、木を見上げている。じっと止まり、見上げて、そのまま両の腕を枕にゴロンとひっくり返った。

    「おいっ!?頭おかしいのか?」
    「はははっっ」
    ペローナの驚きを余所にゾロは笑いながらまた起き直ってあぐらになり、そしてやおら立ち上がった。

    「花橘の香・・・・か。お前帰っていいぞ、俺、今夜はここで寝るから。」
    「ええ?!」
    思わず飛び出したのはホントに素っ頓狂な声だったと思う。寝ると聞いたが寝具などあるわけがない、下は柔らかくて黒い土だ。こんなところで寝ればただ泥まみれになるだけだ。既にゾロのシャツも黒い土が付いている。そもそも普通の人はこんなところじゃ寝れない。
    ゾロはペローナの抗議にもにた視線は相変わらずかまわずその木の木肌を軽くたたいて嬉しそうだった。
    「その木がどうかしたのか?」
    「俺の船にあったのと同じ木だ。」
    これには驚いた。ものすごく優しい目だった。この島でのいつもとかスリラーバークでみた野獣の瞳とは思えない。うれしそうにも穏やかにも見える。見たことのない瞳。

    「・・・・・懐かしいのか?」
    「ああ?懐かしいって言うか・・よく船のここで寝てたからな。こいつの持ち主がまたうるせぇ女でな。」
    くっくっと笑いながら、ゾロは今までになく饒舌だ。
    「がめついわ、口は悪いわ、人を顎で使いまくるわどうしようもない女でな。あいつに慣れりゃお前なんて可愛いもんだ、そりゃホロホロはおっかねェが。」
    ゾロはそっと木に額を寄せた。
    「同じにおいだ。」
    愛おしいものに寄せるように。

    どくんとペローナの心臓が鳴った。
    無視した方がいいとわかっているから振り払う。
    これは危険だ。今なら止められる。

    「お前、女の趣味、悪いんだな」
    「そうだな」
    否定もしない。木を見るばかり。心の底から嬉しそうだ。もうこちらを見ようともしない。

    「お前がどこで寝ようとあたしはかまわない。勝手にしろ」

    ペローナは温室を後にした。振り向くことはしなかった。




    ペローナが城を出てみようゾロに告げたのは次の日だった。

    end










    ・・・・・・・・・・・・

    今年の7月3日は太陰暦では 皐月の22日 です。



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