蜜柑狩 '13ナミ誕
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    ◇遠き峰(ゾロ)

    2011ナミ誕 ] 2011/07/03(日)
    一歩一歩を踏む事にすら慮外の力と技を要し、道は登れど登れどなほ遠く。
    一つ頂を越えたと思ったら先の見えない頂がまた次また次と眼前にそびえ立つ。
    期限は2年。もとより覚悟の道なれど。






    「・・・・ここまでだな」
    「俺ならまだやれる!」
    一呼吸の間の後に、フンと鋭い鼻で軽くあしらわれた。
    「・・気の散じた『獣』につきあうつもりはない」
    ミホークの瞳は鷹よりも厳しい。同じ冷たさで放たれたその言葉を覆せる者などいない。いつものことだが訓練内容はもとより全てにおいて説明などされた覚えもないし実際、すでに遠く離れた背中にはとりつくしまもない。それでも彼の態度を自分は理不尽とは思っていない。

    解っている。全ての因果は己の中にある。




    「ふう」
    異を唱える事ができないまま、刀を杖に側の石の上に座り込んだ。思わぬため息が漏れ出る。

    修行に達成感と満足があったのは初期の頃。愚かなりに輝かしくも目を見張るような時期だった。
    一年を過ぎようかとする今頃では己の延び代は見すえられ、逆に日々ミホークとの差ばかりが解ってくる。
    眼前の姿がただの蜃気楼だったと握り締めてみた手からこぼれた事などもう数えきれない。
    己が一山を超えたと思った先にはまた次の峰が更に高く遠くにそびえ立つ。それでも前に進みまたその山を越えれば次が。そればかりが終わりなく続いて今自分がどこにいるのかもう見当もつかない。更には進んでいるのか曲がってしまい逆に衰えているのかも手に計れない。

    ルフィのために自分の為に、俺はもっともっと強くならなくてはならない。あの東の海での誓いを果たすために決してあきらめない。それは重々解っている。だが。





    ずるずる上体が地面に吸い寄せられるのでそのままごろりと寝ころんだ。
    ここは島の反対側。切り立った崖の上。

    頭上に曇天。ここに滞在して既に1年を超えた。
    幾多の島々からなるこの辺りの空は常に霧の中、良くても曇って雨になる。
    視界の端に海の見える岩山の上から近隣の島が見える。霧の向こうに揺れる小さな灯がいくつか見える。そちらには小さな町村がある。
    海風だ。
    磯の香りが微かに霧に混じっている。目を閉じて居ると違う景色がぼんやりと、霧がかかったように目に浮かぶ。
    俺たちの船の上、芝生が輝く日差しが懐かしい。耳に聞こえるはずのない葉ずれの音が甦る。磯の香りにのった柑橘の香り。
    朧に包まれたようにぼんやり心に灯る昔日の絵。

    こんな郷愁など自分に似合わないことは百も承知だ。
    だが今は岩上に倒れ込みながらただその柔らかな想いの中だけに身を置いていた。





    突然 視界の遠くで空が割れた。
    遠雷かと思った。


    直後空を割り、大きな日の光が一直線に降り注いでいる。
    空を打ち抜いて届いた空を割る陽の光。
    霧の向こうでその鮮やかな光の周囲に散乱した光が重なり増幅して大樹の幹のように天と地を繋ぐ。

    一過 大音声が響く。
    少し遅れて音が追いついた。
    雷よりは軽い、音とは言えないくらいの軽い、何かを割ったような音。


    その光を瞼の裏に焼き付かせてその後濃い霧の臭いをかき消すような清浄な空気が光の束から吹き込んだ。
    空から一気に降りた大気が重量を保って島に吹き付けそのまま周囲に強い風となって広がる。
    圧されるような強さを保つ、濃く、甘い大気だ。
    強い。
    だが軟らかく、そして奔放な風が俺の体を撫で上げて、まとわりつきながらも一瞬で去って行く。

    ああ。先程心に描いたよりもっと鮮やかに懐かしい船上を映し出すその甘くとも澄んだ大気。
    先の絵よりも鮮やかに魅了される。
    瞳を閉じて瞼の裏の映像と共に大気の愛撫を思う存分受ける。



    派手な光の応酬を散じた霧がまた島を包むのにほんの数分。風は去り、また霧の濃い臭いにこの身毎包まれた。
    深い呼吸で吸い込んでも重く濃い大気が戻ってきた。


    だが先程より身が軽くなっている。
    自分の呼吸が変わった。
    何かを得たような。





    「おい、いつまで寝てる?」
    影が瞼を侵略する。俺の残像を遮る。

    傘女だ。
    無視して目を開けずにいると珍しくも、まだ声を掛けてくる。
    「いつもみたいに寝ててアレを見損ねたか?ザマーミロ」
    更に珍しい。俺に話しかけてるのになにやら嬉しげだ。
    「見たぞ」
    どうでも良いと思いつつ相づちを打つのはこの女が何かを含んでいるからだ。
    「なんだつまらん。だがさっきのだが・・あっちの島で空島からの客人が賭けをしたそうだぞ。『ショーならそれ相応のギャラを。賭けなら私は一言一句間違えないけどきちんと書面にしましょ。1島分の霧をぶっ飛ばせばいいのね?』簡単だって笑ってた。」
    「・・・・ほう」
    挑むような気配は戦の気に似る。自分の肌が反応する。何よりも他には居るまいその口調と自信。

    「昨日鷹の目に連れられてそいつらに会わされたが、爺ばかりの中に一人だけあいつも知らない若い女が居たぞ。なんでも手配書付き、でも大事な客人なんだそうだが」
    「・・ほう」
    俺は身を起こした。
    視線のあった傘女は更にニヤニヤと笑う。
    今度はニヤニヤ笑うばかりで黙っている。


    「・・・・・・・・会いたいんじゃないのか?」


    抱かれるような大気。
    その主にも似た懐かしさを。


    しかし。

    「いいや」

    今はまだ会わない。
    会えばそれだけでは。
    まして今の自分には。


    会わない。
    俺が次の半年で遠き峰を登り尽くすまでは。




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